第二部 1978年
影の政府
三界に家無し その1
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の君がおわさねば、為し得なかったであろう。
全世界を驚嘆せしめた事を、まるで昨日の出来事であるかのごとく、思い返していた。
そう言った経緯から、歴史を知る者としては、どうしても、決して軽んじる事のできぬものという認識があった。
天下無双の大型ロボットを操り、人知を超える推論型AIを作って、クローン技術で神の領域を侵した男であっても、二千有余年を過ごしてきた、その人事知を無下には出来なかったのだ。
天皇という至尊の存在は、それほどマサキを畏れさせた。
しかし、この世界の日本では違った。
古代から連綿と続く皇統、それは同じだが、帝の地位も立場も違った。
20世紀の電子情報化時代にあっても、政威大将軍という存在が、全てを仕切った。
字こそ違えども、鎌倉以来の征夷大将軍と同じように、武家の棟梁として六十余州を支配した。
元枢府は、悠久の歴史から、比類なき皇統の権威を畏れた。
鎌倉や室町を騒がせた、承久の乱や正平の一統という、苦い記憶を恐れるあまり、帝室の影響力は、極端なまでに削がれていた。
宸儀を、九重の奥深くに押し込め、囚われ人に近い暮らしをさせた。
その締め付けは厳しく、覇府の心ひとつで、大嘗祭はおろか、雨漏りする内裏の鴟尾の架け替えなども出来ないほどであった。
(大嘗祭とは、毎年秋に行われる国家安寧や五穀豊穣を祈る宮中祭祀の事である)
無論、そんな事をマサキは知らなかった。
だから、皇帝の事を口に出したのだ。
皇帝という、何気ない言葉を聞いた、白銀たちが、まるで幽鬼に会った様に、恐れおののく様を見て、マサキは心から驚いていたのだった。
御剣が、唖然とするマサキに対して声を掛けた。
「フフフ、主上の事か。面白い事を言うよのう」
先程とは打って変わって、厳しい表情から緩んでいた。
そして、まるで子供に諭すように、
「何を隠そう、実は政威大将軍直々のお申し出なのだよ。
殿下は日本帝国三軍の長で在らせられる方。故に日本の戦術機開発を憂いたのだよ」
「何」
「斯衛軍の方で、武家専用の戦術機を作ることになってね。
今の激震、日本版のF4ファントムの性能の低さを、殿下ご自身が操縦なさって、憂慮されて居った。
篁君の件もあって、日本と因縁の深いグラナンの設計ノウハウを参考した物を作れと内々にお話が有った。
私の方で、色々手配したが、何せプロではない。
それで、最新型のF14を開発中のハイネマン博士を日本に招聘しようと準備していた所なん
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