第二部 1978年
影の政府
三界に家無し その1
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、ニューヨーク市警のパトカーで、応援に来た警官隊に、足止めを喰らっていた。
一応、一緒に来たFBI捜査官2名が、マサキ達の事情を説明したが、所轄違いを理由に受け付けなかった。
外国人である彼等が、許可なく拳銃を使った科で、事情聴取を続けていると、マンハッタンの総領事館から御剣がすっ飛んできた。
キャデラックのストレッチリムジンとともに、荷台に幌をかぶせたボンネットトラックで乗り付けた。
車から降りた御剣は、杖を突き、羽織姿で、マサキ達を拘束した警官の前に行くなり、
「彼等を連行することは出来んのだ。何せ私の部下だからな」
「なんですと」
「私は帝国政府の特命全権大使、御剣雷電」
「身分証明は!」
「後ろに連れてきた、一個小隊の護衛が、何よりの証だ」
彼がそう声を掛けると、熊笹迷彩と呼ばれる模様の野戦服に身を包んだ兵士達が、一斉に捧げ銃をした。
「ハイネマン博士と、彼を訊ねた、そこの3人組の紳士は、ともに篁君の友人だ。
そして、私は篁君の古くからの友人だ。よって大使館に連れ帰るが文句あるかね」
外交特権を利用した御剣の、あまりの強引さに、警官たちはシーンとなってしまった。
御剣は、マサキの方を振り向くなり、
「さあ、行こうか。木原君」
「ああ」
さしものマサキも、御剣という男の好き勝手さに呆れて、声も出なかった。
唖然とする警官たちを尻目に、マサキ達は迎えに来た大使館の車に、乗せられる。
帰りの車中、リムジンの後部座席に座った御剣は、興奮冷めやらぬマサキに、
「こんなこともあろうかと、斯衛軍一個小隊を連れて来たんじゃ」
鷹の様な鋭い目を向けると、威嚇する様に光らせて、
「武家のおもちゃの兵隊だが、武器は本物。
彼等は、私が撃てと言えば、ためらいも無く撃つ」
マサキは、御剣の言葉を聞いて、わざとらしく呆れた顔をして見せた。
「こんなことをして、貴様等が奉戴する皇帝に迷惑は掛からんのか……」
マサキは、この世界とはよく似ているが、違う社会制度の日本で育った人間である。
元の世界では、常に国の歴史の中心に、万世の君が関わっていた。
遠い神護景雲の頃の、道鏡の害は、言うに及ばず、国家存亡の秋であった文永・弘安の外寇、応仁の乱を嚆矢とする朝廷の衰微からも、乗り越えて見せた。
幾度となく訪れた摂関家や幕府の専横や、皇統断絶の危機から脱出する様は、正に奇跡としか表現できない。
あの焦土から立ち直った経済復興、アジアで初開催された国際五輪大会。
屈辱の敗戦から僅か20年余りの恢復も恐らく、一統
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