第二章
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「犬だって心があるからな」
「だからか」
「トラウマ持ってな」
「ふわりのトラウマはか」
「捨てられたことでな」
「俺達が遠くに連れて行くとか」
「また捨てられると思っていたんだ」
そうだったというのだ。
「暫くな」
「そうだったか」
「ああ、けれど俺達がそんなことしないってな」
「ふわりもわかったんだな」
「何度も車で連れて行かれて遊ばせてもらってな」
そうしてというのだ。
「それで普段の俺達も見てだ」
「捨てられることはないってわかったんだな」
「俺達だと絶対にな」
「そうなんだな」
「犬だってトラウマを持つんだ」
父は強い声で言った。
「人にトラウマ持たせたら駄目だな」
「暴力を振るったりしてな」
「それなら犬にもだ」
「そうしないと駄目だな」
「家族なら絶対だ、若し家族にトラウマ持たせたらわかるな」
「家族失格だろ」
洋介は即座に答えた。
「もう」
「そうだ、俺達はそんなことしない様にするぞ」
「ああ、絶対にな」
レース場に向かいつつこんな話をした、ふわりは車に乗っている間何の心配もない様にぐっすりと寝てだった。
レース場に着いてケースから出してもらうと自分からだった。
「ワンワン！」
「思う存分身体動かせよ」
「ワン！」
洋介に尻尾を振って応えてだった。
家族が見守っている傍で思う存分身体を動かした、もうそこに捨てられたことへのトラウマはなかった。遊ぶ場所に行って楽しむという喜びだけがあった。
犬だってトラウマを持つ 完
２０２３・１・２３
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