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犬だってトラウマを持つ
第一章

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                犬だってトラウマを持つ
 休日ふわりを家から離れたドッグレース場に連れて行って思う存分身体を動かして楽しませる為にだ。
 ふわりを乗せてレース場に向かう時に車を運転しているふわりの飼い主である国咲家の息子洋介はこんなことを言った。
「ふわり昔は車に乗るとな」
「物凄く鳴いてたわね」
 ふわりを入れたケースを足の上に置いて後部座席に乗っている母の百合子が応えた。
「そうだったわね」
「凄く怖がる風でな」
「うちに来て暫くそうだったわね」
「凄かったな、あの時は」
「当たり前だろ」
 百合子の横に座っている父の文太が言ってきた。
「そうなっていたのも」
「当たり前って?」
「ふわりは車に乗せられて保健所に送られたんだぞ」
 前の飼い主達にというのだ。
「ケースに入れられてな」
「それでか」
「車に乗せられて何処かに連れて行かれるとな」
「捨てられると思ってか」
「それでだよ」
 そう思ってというのだ。
「怖がるんだ」
「あれか、トラウマか」
 洋介は父の話を聞いて言った。
「ふわりはトラウマになってたんだな」
「捨てられたことがな」
「それで俺達が遊びに連れて行ってもか」
「捨てられると思ってな」 
「怖がってたんだな」
「人間もトラウマ持つならな」
 それならというのだ。
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