第一部
プロローグ3
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
甘粕冬馬は、忍者である。
本人は忍者という呼ばれ方はあまり好きではないらしく、隠密とか呼ばれることを好むのだが、それは今どうでもいい。問題なのは、彼が自分の上司である沙耶宮馨に土下座していることである。
彼の上司である馨は、現在高校三年生の十八歳。つまり、冬馬よりもよっぽど年下の女性なのだが、彼はそんなこと全く気にしていなかった。彼には、年下の女の子に土下座してでも成し遂げなければならない事があった。
それは・・・
「もう限界なんです。本当に、これ以上は身が持ちません!」
「いや・・・でも君以上に信頼出来る人材って殆どいないんだよね・・・。君に今辞められると本当に困るんだけど・・・;;」
何時も飄々としている馨だが、流石の彼女も彼の必死に懇願に額に汗を垂らしている。それは、彼の様子から、本気で頼み込んできているというのが分かるからであり・・・同時に、彼女自身も今回の任務は流石に酷だったかと感じているからである。
「・・・そんなに鈴蘭王たちは・・・ヤバイかい?」
「((((;゚Д゚))))((((;゚Д゚))))」
その質問の答えは、彼の様子が物語っていた。先祖代々忍びとしてこの国の為に身を粉にして働いてきたのが彼の家計だ。その末裔である彼も、幼少時からそれは厳しい修行を積んでおり、特に隠密に関しては間違いなく世界でもトップクラスの実力を持っているのだ。
忍びとしての心構えも実力も十分備わっている彼がここまで恐れる対象・・・噂で聞いてはいたものの、これは予想以上の難敵だったかと頭を抱える馨。
「本当・・・厄介な問題を起こしてくれたものだよ。神殿教団・・・。」
彼女は、一年前に起こったある事件を思い出し始めた。
事の始まりは、一年前のある日、東京のあるビルでテロがあったことからだ。
一般人も相当数巻き添えにしたこの事件は、事もあろうに神殿教会という一魔術結社が引き起こしたものだったのである。その組織は、それまでも、とある一人の少女を巡って何度も諍いを起こしており、いくら発言力がある強力な魔術結社といえども流石にやりすぎだと日本に注意をされた直後のことであった。
表と裏を問わず、多数の人間、魔人が死んだこの事件には、流石の日本政府も怒り狂った。各国の魔術結社に依頼して、神殿教会を潰そうと目論んだのだが・・・時すでに遅し。唯の人間には太刀打ち出来ない状況にまで追い込まれてしまった。
彼らにとって誤算だったのは、神殿教会のトップである『預言者』と呼ばれる人物が、実は人間でも魔人でもなく、神だったことだろう。そもそも、人間社会に害しか齎さない神々が、自分で魔術結社を作ってそれを隠れ蓑にするなど、一体誰が考えつくだろう
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ