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第四話 神犬その二

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 そこにだ、草薙が来て犬鬼のところに来て膝をついて彼の頭を撫でて優しい笑顔でこんなことを言った。
「いい子だ、よくやったな」
「ワンッ」
「あっ、犬鬼が見えるんですか」
 護刃は草薙を見て彼に嬉しそうに尋ねた。
「そうなんですか」
「見える?ここに普通にいるじゃないか」
 草薙はその護刃に顔を向けて答えた。
「狼に似た黒と白のな」
「そうですか、ちゃんと見えるんですね」
「見えるって意味がわからないが」
 草薙はそれでもと述べた。
「お嬢ちゃんの犬なんだな」
「はい、そうです」
 護刃は明るい笑顔で答えた。
「犬鬼は」
「そうなんだな、いい子だからな」
「だからですか」
「これからも大事にしてやりなよ」
 ここでもだ、草薙は優しい顔で話した。
「どの命にでもそうだけれどな」
「命あるものならですね」
「ああ、誰でもな」
「そうですよね、ところで軍隊みたいな服ですが」
「ああ、俺は自衛官なんだ」
 草薙はここで立って話した。
「陸上自衛隊のな」
「そうなんですね」
「そこで働いていてな」
 それでと言うのだ。
「そうなったのも命を護りたいからだよ」
「それが自衛隊のお仕事ですからね」
「ああ、そう思って高校を卒業してな」
 そうしてというのだ。
「入隊したんだ、それで今もな」
「自衛隊におられるんですね」
「陸自にな」
 所属先のことも話した。
「いるさ、だから何かあったらな」
「陸上自衛隊にですね」
「志勇草薙、今は一等陸曹だ」
 階級のことも話した。
「歳は三十だ」
「あっ、私よりずっと年上ですね」
「おいおい、これでもまだ若いつもりなんだがな」
 草薙は咎めても口調も表情も優しいままだった。
「おじさんとは言わないでくれよ」
「そんなこといいません」
 護刃はそれは否定した、それも真面目に。
「絶対に」
「そうか、嬢ちゃんいい娘だな」
「猫依護刃といいます」 
 ここで護刃も名乗った。
「中学生で群馬から来ました」
「そこからか」
「東京って賑やかですね」
「そうだろ、こんな面白い街はそうそうないな」
 草薙は優しい顔で微笑んだまま応えた。
「ずっといても飽きないよな」
「そんな街なんですね」
「ああ、ただな」 
 ここでだ、草薙は。
 自分の使命を思ってだ、一瞬だが悲しい目になって言った。
「出来たらずっとこのままでいて欲しいがな」
「きっとそうなりますよ」
 護刃は草薙のその言葉ににこりと笑って応えた。
「東京も私も草薙さんも」
「ずっとか」
「このままですよ、そして世界も」
 護刃は無意識のうちに自分の使命を思ってこう言った。
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