第五十六話 かなり飲んだのでその九
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「一体」
「誰だってそう思うよね」
「本当にそんな人になったら」
「人間として終わりだね」
「そう思うからね」
「なりたくないね」
「そんな人にはね、だから怖いわ」
その人の話を聞くと、というのだ。
「人間でいたいから」
「そこまでいくと人間でないからね」
「餓鬼か出来損ないね」
「人間のね。人間堕ちるのは怖いよ」
達川は真剣な顔で述べた。
「だから貧乏を怖いって人もいるね」
「貧乏神に憑かれて」
「こうした考えの人もいるし」
この辺りは人それぞれである、一口に堕ちると言っても経済的にそうなることを恐れる人もいれば精神的にそうなることを恐れる人もいるのだ。
「俺の場合はね」
「人間として出来損ないになって」
「餓鬼とかね、そうしてね」
そのうえでというのだ。
「誰からも見放されて嫌われて」
「それで居場所なくなって」
「野垂れ死にすることがね」
「怖いのね」
「それが怖いよ、地震よりも怖いよ」
それこそというのだ。
「もうね」
「何が怖いかっていうとね」
「戦争も怖いけれど」
「正直災害の方が怖いわね」
「戦争は人間の手で防げるよ」
それが出来るのもまた人間の叡智である、戦争が起これば何がどうなってしまうかは言うまでもないことであろう。それを防げるのも人間であるのだ。
「けれどね」
「災害はそうはいかないからね」
「ある程度予測は立てられるけれどね」
「台風とかね」
「竜巻や火事、雷もね」
「そうよね」
「けれど完全には防げないし」
それは無理だというのだ。
「噴火だってね」
「ある程度予測は出来てね」
「対策は立てられるけれど」
「避難とかして」
「けれどね」
それでもというのだ。
「完全に防ぐことはね」
「出来ないのよね」
「特に地震はね」
達川はその災害はと述べた。
「無理だよ」
「私達の学校がある神戸だってね」
「そうそう、地震で一回崩壊してるから」
阪神大震災である、神戸そして大阪で六千人に達する死者及び行方不明者を出してしまった災害だった。
「東北の地震はもっと酷かったけれどね」
「神戸もね」
「今も言われてるしね」
関西特にその神戸でだ。
「最悪だったって」
「ええ、そう思うと」
「災害特に地震はね」
「怖いわね」
「けれどそれと同じかそれ以上に」
「そうした人になるってことは」
「怖いよ、やっぱり生きていたら」
人間としてというのだ。
「少しでも立派になりたいし」
「いい人生送りたいわね」
「それで死ぬ時もね」
「いい死に方したいわよね」
「誰からも見捨てられて行方不明になって野垂れ死になんて」
そうした死に方はというのだ。
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