第一章
[2]次話
ナマハゲは怖くなくても
秋田のナマハゲを見てもだ、小学生になったばかりの宮内香耶は笑っていた。それで家がある北海道に帰っても笑顔で言った。あどけないがはっきりした長い睫毛の目と赤い程よい大きさの唇と左の方の一部を編んだ見事な黒髪と形のいい顎と眉を持つ色白の美少女と言って娘である。
「全然怖くないわよ」
「えっ、怖かったよ」
兄で中学三年の雄馬はこう言った、妹によく似た顔立ちであるが彼は黒髪をショートにしている、背は一七〇程度で痩せている。
「僕には」
「お兄ちゃん怖がりよ」
「あんなお面被って包丁持ってだよ」
ナマハゲの姿を話した、それも必死の顔で。
「泣く子はいねえかって暴れ回るんだよ」
「けれど食べられないよ」
「いや、食べられなくてもだよ」
それでもというのだ。
「物凄くね」
「怖いの?」
「怖いよ」
実際にというのだ。
「本当にね」
「だからあんなの全然怖くないわよ」
香耶はまだ言うのだった。
「全然ね」
「ナマハゲが怖くないなんておかしいよ」
小学生になったばかりの妹に必死の顔で言った。
「香耶ちゃんは」
「お兄ちゃんが怖がりなだけよ」
整っているがそこにあどけなさを入れた笑顔で兄に言うのだった、二人の両親はそれを見て香耶の方が肝が据わっているのかと思った、だが。
ある夜だ、香耶は両親に震える声で言ってきた。
「お父さん、お母さんおトイレついてきて」
「おトイレ一人で行けないのか?」
「昨日まで行ってたでしょ」
「だってさっきテレビに蛇出て来たから」
だからだというのだ。
「怖くて」
「そうか、それじゃあな」
「ついていってあげるわ」
母が出てだった。
そうして香耶についていった、そして。
兎角だ、香耶は蛇を見ると怖がった、それを見て雄馬は言った。
「蛇なんて怖いかな」
「怖いわよ」
香耶は兄に震えつつ答えた。
「あんな怖いのないわ」
「そうなんだ」
「怖いから」
それでというのだ。
「私絶対に見たくないの」
「そんなにか」
「だって毒あるし大きいと人食べるのよね」
そうするからだというのだ。
「物凄くね」
「怖いっていうんだ」
「そう」
こう兄に言うのだった。
「蛇はね」
「別に怖くないよ」
雄馬は首を傾げさせて言った。
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