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第五十五話 本当の勇気その二

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「十一キロの木刀を毎日千本二千本振る」
「滅茶苦茶な鍛錬よね」
「もうそんなことしたら」
 この鍛錬を積めばというのだ。
「肩も腕もね」
「凄い筋肉になるわね」
「足腰も凄いことになるし」
 それだけの重さの木刀を毎日それだけ振っていればというのだ、剣道の素振りは足腰の鍛錬にもなるのだ。
「腹筋や背筋もね」
「物凄い力つくわね」
「だから勝海舟さんなんてね」
 幕末のこの人物はというのだ。
「もう全身ね」
「筋肉だったのね」
「何でも当時としても小柄で」 
 幕末の人は現代人より十センチ以上平均身長が低かった、大体一五五かそれ位であったがかつてはどの国の人間も栄養摂取の関係で小柄だった。
「一四九位だったんだ」
「私より小さいじゃない」
 一華はその慎重を聞いて驚いた。
「それはまた」
「ソ連の秘密警察の長官で一五一位の人もいたよ」
「その人も小さいわね」
「それで勝つ海舟さんはね」 
 達川は彼に話を戻した。
「それ位でね」
「かなり小さかったけれど」
「その身体は」
「全身筋肉だったのね」
「その執事さんは今も毎日その鍛錬をされていて」
 九十を過ぎた今もというのだ。
「しゃんとしてるそうだし」
「毎日それだけの修行をしてるから」
「それで薩摩藩はね」
「その流派もあって」
「滅茶苦茶強い人多くて」
 そうしてというのだ。
「肝っ玉もね」
「あったのね」
「けれど本当の勇気は」
「一人でも大事なものを守ろうとすることね」
「そう言われたんだ」
 こう一華に話した。
「俺はね」
「いいこと言われたわね」
「やっぱりそう思うよね」
「私も覚えておくわ」
 達川に飲みながら真剣な顔で答えた。
「その言葉」
「勇気は何か」
「一人でも大事なものを守ろうと立ち上がること」
「そのことをだね」
「覚えておくわ」 
 絶対にというのだった。
「本当にね」
「そうしてね」
「ええ、絶対にね」
「女の子でも」
 勇気はとだ、一華は強い声で言った。
「必要だしね」
「そうだよね、結婚したらね」
「旦那さん守って子供もね」
「子供はわかるけれど」
「いや、旦那さんも困る時あるでしょ」
 女と比べると力の強い男でもというのだ。
「そうした時にね」
「守るんだ」
「自分だけしかいなくても」
「そう言うんだ」
「ええ、世界の皆が敵に回ってもっていうけれど」
「自分だけはだね」
「味方になって」
 そうしてというのだ。
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