第五十四話 夏祭りその十四
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「まさにだよ」
「本当の勇気ね」
「怖いよね」
達川はこうも言った。
「一人だと」
「味方は誰もいなくてね」
「それで相手が多いとかね」
「強くてね」
「そんな状況だと」
どうしてもというのだ。
「怖いよね」
「一人でいるとね」
「けれどね」
「怖くても」
「大事なものを守る為に戦える」
「そうしたことがなのね」
「本当の勇気だってね」
その様にというのだ。
「教えてもらったんだ」
「勇気とは何かなのね」
「これは男の人だけじゃなくて」
「女の人もなの」
「持つべきだってね」
その様にというのだ。
「言われたよ」
「性別関係なくなのね」
「勇気は誰にでも必要だからって」
その様にというのだ。
「言われてね」
「それでなのね」
「まあ項羽さんみたいに強かったら」
漢の高祖劉邦と天下を争った彼ならというのだ、その強さは中国の長い歴史の中で最強で歯とも言われている。
「一人でもね」
「あの人滅茶苦茶強かったから」
「だからね」
そのあまりもの強さの為にというのだ。
「一人でもね」
「どんな相手でも勝てるわね」
「相手がプロレスラーでも」
それでもというのだ。
「戦争の指揮だけでなく武芸もね」
「滅茶苦茶強かったから」
「誰でもだよ」
「勝てたわね」
「けれどあの人は特別だから」
項羽、彼はというのだ。
「普通の人と違うから」
「どう見てもね」
「関羽さんより強いかもだし」
その強さはそこまでだったとさえ言われている。
「当然張飛さんよりもね」
「関羽さんより張飛さんの方が強かったわね」
「その張飛さんでも勝てない位にね」
「項羽さんは強かったから」
「また別格だよ」
彼の場合はというのだ。
「あくまで普通の人がね」
「一人でどうか」
「立ち上がって戦えるか」
大事なものを守る為にというのだ。
「相手がどれだけ多くても強くても」
「それが本当の勇気があるかどうか」
「そう言われたよ」
「そうなのね」
一華はここまで聞いて深く考える顔になった、団地の夏祭りの一幕だった。そして祭りはまだ続くのだった。
第五十四話 完
2022・9・15
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