第五十四話 夏祭りその三
[8]前話 [2]次話
「出るところ出てるってね」
「そんなにいいの」
「そう、背が高くてもいいけれど」
「小柄でもなの」
「そう、いいから」
それでというのだ。
「あんたもよ」
「いいのね」
「そうよ、じゃあ着付けしていくけれど」
母はさらに言った。
「履きものは何にするの?」
「サンダルとか?」
「下駄あるけれど」
「下駄履いていいの」
「あんたがそうしたいならね」
それならというのだ。
「別によ」
「履いていいの」
「浴衣なら草履か下駄でしょ」
「うち草履ないわね」
「ええ、サンダルはあるけれどね」
「下駄はないから」
「下駄履きなさい、それで足袋もね」
母はさらに話した。
「履きなさい」
「熱くない?」
「靴下と一緒でしょ、あまり足も素肌出すとね」
母はこのことについてはこう言った。
「よくないから」
「冷えるから」
「夏でも冷えることには気をつけなさい」
「私冷え性だし」
「尚更よ」
そうした体質だからだというのだ。
「それでよ」
「下駄履くなら」
「それならね」
「ちゃんと足袋もなのね」
「ええ、ただ足は踏まれない様にして」
母は真面目な顔でこうも言った。
「踏むこともね」
「下駄で踏まれると痛いわね」
「そう、歯があるからね」
所謂下駄の歯である、二枚あるのが普通であるが山伏のものは一枚であることで有名であり天狗の下駄も一枚である。
「だからね」
「相手も怪我するから」
「まして夏だから」
今度は季節の話をした。
「皆サンダルとかでしょ」
「それに踏まれるとね」
「余計に痛いからね」
靴の時よりもというのだ。
「だからね」
「人の足を踏まない様に」
「注意してね」
「わかったわ」
一華は母のその言葉に頷いた。
「そうするわね」
「そうしてね、じゃあ浴衣着たら」
「その後は」
「そう、足袋を履いてね」
「下駄なら下駄ね」
「それを履いてね」
そうしてというのだ。
「行って来てね」
「そうするわね」
「お母さんも後から行くけれどね」
娘に笑ってこうも言った。
「お父さんと一緒にね」
「お母さん達も行くの」
「毎年行ってるじゃない」
笑顔での返事だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ