第五十一話 暴力の代償その八
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「スーツ着ても」
「ヤクザ屋さんみたいな」
「それでね」
母は留奈に話を続けた。
「アクセサリーもね」
「そうした風で」
「もう見てられなくなって」
「正視に耐えないってことね」
「あまりにも酷い外見だったでしょ」
「本当にヤクザ屋さんみたいな」
留奈もその時の外見を思い出して答えた。
「今も酷いし」
「あの頃はもうね」
「今以上だったわね」
「テレビに出て欲しくなかったわ」
母はそれがどうしてかも話した。
「子供の教育に悪いし」
「今も悪いわね」
「あれで子供のスターだったのよ」
かつてはというのだ。
「昭和の終わり頃なんてね」
「あの人が若かった頃ね」
「あの頃は球界をしょって立つ若きスター」
「そんなのだったの」
「新人類トリオって呼ばれて」
「新人類?」
留奈はその言葉に頭にクエスチョンマークを出した、それは平成の生まれの彼女には全く縁のない言葉だったからだ。
「何それ」
「その頃の大人の人達とは考えが全く違う」
「そうした人達なの」
「若いね、個性を前面に出した」
「そうした人達をそう呼んだの」
「そうだったのよ」
かつてはというのだ。
「それであの人もね」
「新人類トリオって呼ばれてたの」
「後の二人は同じチームの」
西武のというのだ。
「工藤さんと渡辺久信さんよ」
「ホークスの監督さんだった人と」
「ライオンズの監督で今ゼネラルマネージャーのね」
「その人達ね」
「お二人共結構古風なところあるけれど」
「当時はそう呼ばれてたのね」
「そうだったのよ」
こう娘に話した。
「そしてそれがね」
「あの人はああなったのね」
「それで挙句捕まったのよ」
「無茶苦茶酷い凋落ね」
「お母さんの年代そして少し上の人達はこう言うのよ」
娘に残念そうに話した。
「子供の頃はスターだったのに」
「滲みる言葉ね」
「そうでしょ、かなりでしょ」
「その頃のままだったら」
「こんなこと言われてないわ」
「そうよね」
留奈もそれはと頷いた。
「人間変われば変わるもので」
「悪く変わることもね」
「あるのね」
「そこで一番大きいのがね」
「暴力ね」
「あの人は高校時代全身痣だらけになってたそうだけれど」
その暴力でだ。
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