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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その2
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前の長年の夢だったからな」
「我が理想の帝国を築くにあって必要なのは、潤沢な資金と世界最強の武力、そしてそれを裏付けする権威。
この三つのうち、どれか一つ欠けても駄目なのです」
「それで」
「既に我等は石油取引や金融業の世界を通じて世界の富の一部を牛耳る事に成功しました」
「末弟のお前には、金融業という修羅の道を歩ませてしまったを兄として申し訳なく思っている」
と言葉を受けて、男は心から恐縮した。
「いえいえ、兄さんたちが政治の世界に入ってくれたからこそ、僕は後方で自在に動けたのです」
副大統領は、快然と笑った。
「思えば、長い道のりであった。
40年かけて政界という魔窟の中から這い出てて、山の頂が見える場所に上り詰めるまで」
「次の大統領選には出られるのですか。
もし出られるのであれば、政財界に200億ドルの資金をばら撒く準備が御座います」
(1978年のドル円のレート、一ドル195円)
弟は、兄の勝利をみじんも、疑っていないらしい。
「兄さんが大統領職に就けば、我等は名実ともに世界の軍事と金融をこの手に出来るのです。
ただ、足りぬものが御座います」
「何かね。教えてくれぬか」
副大統領は、なお(ただ)した。
「世界最強の軍隊と、無敵のドル体制を持って満足出来ぬ理由とは」
弟は、静かに答えた。
「権威の裏付けです」
「権威?」
「我らは、祖父の代にニューヨークから世界に躍り出て、あらゆる富と名誉を得ましたが、歴史が御座いません。
荒々しい中近東の土侯(サルタン)や東南アジア諸国のものどもを手なずけるには、すこしばかり戦争でもしなくてはいけません。
でもそんな無益な殺生をしなくても良い方法が御座います」
「兵乱を経ずして、あの土侯(サルタン)を手なずけるだと」
「僕は、極東研究を若い頃からしているのを知っていますね」
「ああ」
「3000年の東亜の歴史を紐解いた時、ローマの坊主どもさえ手を余す存在に気が付いたのです」
「初耳だ。そんな存在があるのかね」
「日本帝国の皇帝です。
彼等は自分の君主の存在を忘れ去っていて、京都のみすぼらしい宮殿に、秘仏が如く厳重に隠しています。
ですが、その歴史的長さはあのアビシニア(エチオピア)のソロモン王の血脈に匹敵する物なのです」

「イタリアのムッソリーニがかつてアビシニアを求めたように、僕としても日本を、その秘密の園の奥底にある宝玉を我が物にしたいのです」
副大統領は、弟の意見に理解を示しつつも、
「今更、歴史の中で埋もれた宝玉など持ち出して、なんになるのだね」
むしろ責めるような語気で、なお云った。

「中東問題で我等と歩調を合わせ、イスラエルを承認している日本が、中近東で一定の力を持つのか。
僕なりに調べ、考えてみました。
資金力も
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