第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その2
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ちべつ)した情報部長は、喜色をめぐらせ、
「フフフ。愛の力は偉大だね。暴力など足元にも及ばん」
と声を上げ、椅子から立ち上がり、
「あの氷のような冷たさを持つ木原マサキの心を溶かした、少女の想い。
偉大なる愛の力とやらを持って、我等は木原に近づく。
G元素を遥かに凌ぐ、ゼオライマーの秘密を手にする事も夢ではないと言う事だよ。フフフ」
と満面の笑みを男に見せつけた。
「そうすると、木原とベルンハルト嬢が一緒になってくれると良いのですが……」
「やはり、ベルンハルト嬢の事を気にしているのかね」
「はい。彼女は壁の中です。シュトラハヴィッツ将軍も彼女に気を掛けてるでしょう。
誘拐も難しいと思われます。そうすると、彼女が木原に本気になって呉れれば違うのでしょうが。
こればかりは、我等の一存では……」
「まず、マスメディアを使って、木原がベルンハルト嬢と婚約したという情報を流せ。
日本政府がどう動くかが、見ものだ。フフフ」
と、不敵の笑みを浮かべながら、
「米国には、淫靡な飾り窓もないし、貴族の洒脱な社交会もない。
それ故に、彼等は愛を語らう場所として、男女の純愛を楽しみにしている所がある。
『世界を股にかける、ゼオライマーのパイロットが、東ドイツ軍人の妹に恋した。
だが、国法の為、結婚できない。悲劇の愛を結ぶためには……』などと新聞紙面に出すように提案しよう。
ニューヨークやロサンゼルスの現地工作隊を用い、米国世論を巻き込み、ラジオや新聞でやんや騒げば、日本は落ちる。
貴公子、篁祐唯と、ミラ・ブリッジスの恋を参考にしてな」
「では、デイリーニューズやシカゴ・トリビューンの一面にぶち抜きで彼女の写真を掲載させるように、本部には上申しておきましょう。
マスメディアが敵となっては、さしもの木原もゼオライマーも自由に動けますまい」
木原マサキが中東への接触を図ったことは、米国にも漏れ伝わった。
早速、米国の石油財閥の当主の耳にも入り、秘密会合が成されることになった。
マンハッタンの石油財閥本部ビルの最上階の一室に、副大統領が入るなり、窓を眺めていた男が振り返った。
「御足労掛けます。副大統領閣下……」
「ディヴ、冗談は止せ」
副大統領の言葉に、男はたちかけて、
「ネルソン兄さん、ワシントンから御足労を掛けました。ハハハ」
と、他人事みたいに笑った。
急な弟の呼び出しに、副大統領は、何を思ったのか。
日頃から関心のある話を、問い質してみることにした。
「日本という極東の小国に、君はそこまで執着する理由が分からない。教えてくれぬか」
「兄さん、僕が日本を我が物にしたいのは知っていますね」
「お
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