第二部 1978年
影の政府
三界に家無し その4
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声を上げた。
「100G」
奥ですべてを聞いていた大統領は、重い口を開いた。
「そこまででよい。
身の凍るような様々な話を聞かせてもらったが、私には到底信じられんのだよ、博士。
日本で実現可能だったことが、合衆国で実現不可能だと言う事がありうるのかね」
その表情は、国家の威信を背負う指導者の面差しではなかった。
哀れなほど憔悴しきった、一人の老人、そのものであった。
「全世界の科学の粋を集め、研究に取り組んでいる合衆国の技術陣から、重力操作装置の最終的段階に至りましたと報告を受けていないのに……」
まるで、遠くを見つめるような目で答える。
「一人の日本人科学者の手によって、そんな摩訶不思議な装置が完成した等と……。
そんな馬鹿な話が有るのかね」
グレイ博士は、今にも夕暮れの降りだしそうな顔つきで述べる。
「私がお答えしましょう、大統領閣下。
実は重力操作としか考えられない事例が存在するのです。
ゼオライマーはソ連の核爆弾の直撃を受けましたが、傷一つなく、耐えて見せたのです」
チェースマンハッタン銀行会長も、同調を示した。
「ゼオライマーには、我等にない重力操作の装置が積んであると考えられる。
だから、その秘密を知りたいのだ。どうしても欲しい……」
そう言いながら、窓に近づき、新型動力炉を確かめる。
「ゼオライマーに勝つためには、ラザフォード場を強化するしかない。
なんとしても手に入れろ」
会長は振り返ると、三博士は力強く答えた。
「はっ」
さて、場所は変わって、ソ連極東のウラジオストック要塞にある赤軍参謀本部。
そこでは、参謀総長をはじめとする赤軍首脳部の一団が密議を凝らしていた。
参謀総長は、スフォーニ設計局長からの説明に驚きの声を上げる。
「何、スフォーニ設計局のコムソモリスク・ナ・アムーレの工場で、新型が完成しただと……」
コムソモリスク・ナ・アムーレとは、極東のアムール川近辺にある一大工業都市である。
『アムール川にある共産党青年団の都市』の名を持つ、秘密都市の建設は1930年に始まった。
将来の世界大戦を見据えたスターリンの指令により、極東に大規模な工業都市を設置したのだ。
この地には、ソ連極東随一のアムール製鉄所をはじめ、各種軍事生産の拠点が作られた。
無論、シベリアの地にある、この秘密都市の急速な発展の裏側には、悲劇があったことを忘れてはならない。
日本をはじめとする捕虜や政治犯が送り込まれ、過酷な労働環境で、ほぼ無給に近い低賃金労働を強いられた。
「しかし、BETAの大群は地上から居なくなったのだぞ。何処で実験をする」
GRU部長の懸念に、スフォ
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