第二部 1978年
影の政府
三界に家無し その4
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米国ニューメキシコ州北部にあるロスアラモス群。
標高2,200メートルの、この地にある、国立ロスアラモス研究所。
1943年にマンハッタン計画で核兵器開発を目的に設立された科学研究所である。
核研究の主要拠点として、多くのノーベル賞受賞者を含む世界で最も有名な科学者が集まった。
2,000棟を超える研究施設には1万人以上の研究員を有し、『米国安全保障の至宝』と称された。
研究所の真北にあるロスアラモスの町は、1943年の「Y計画」の時期を通して大きく発展している。
今日、米国エネルギー省の管理下に置かれているロスアラモス研究所の研究分野は、以下のとおりである。
国家安全保障、宇宙開発、核融合、再生可能エネルギー、医学、超微細技術、電子計算機。
多岐にわたる分野で、学際的な研究を行い、全世界の最新技術をリードしてきた。
同研究所の地下数百メートルの大空洞で、秘密実験が行われていた。
全自動化された装置を通じて、ベルトコンベアより運ばれていく運ばれていく未知の物質、G元素。
その一種である、グレイイレブンは、遠心分離器によって、抽出される。
抽出された粉末状の物質は、溶鉱炉により、インゴットに成形された後、ロボットアームで運ばれる。
奥にある作業指揮所より、その様を見ていた研究員の一人が呟いた。
「これがG元素」
空気冷却のなされたグレイイレブンは、まもなく特殊タービンを備えた動力炉へ投入された。
説明役を務めるリストマッティ・レヒテ博士は、興奮した面持ちで語り掛け、
「これが、私とカールス・ムアコック博士で作った新型の動力炉に御座います。
発生させる電力は原子力発電に相当し、機関部分だけでも軍艦を動かして余りあるほどに御座います」
指示棒を片手に奥に座る男達に、詳細な説明をした。
「この新機関の余剰電力の使い道ですが、新開発の荷電粒子を用いたエネルギー砲を運用する予定です。
癌治療の最新研究に使われている重粒子線の破壊力には、恐るべきものがあり、我等も軍事利用が出来ぬものかと考え、開発中の物です。
その威力から、一機だけでもソ連の太平洋艦隊を全滅させることも可能と思われます」
手前の椅子に腰かける小柄な男が、突然大声を上げる。
聲の張りぐわいと言い、明瞭さと言い、50代を過ぎた男とは思えぬ声だった。
「それは、待ち遠しいのう」
「ありがとうございます。ディヴさま」
「今の私は、石油財閥の3代目ではなく、チェース・マンハッタン銀行の会長という立場で来ている。
レヒテ博士、気をつけ給え」
会長からたしなめられると、レヒテ博士は深々と頭を下げた。
博士が謝罪し終えると、別な研究員が歩み出る。
「宜しいでしょうか。エネルギーチャージが完了いたし
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