第2部
ダーマ
シーラの意志
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。身内であるあんたなら、わかるだろ?」
だがユウリの声が聞こえないのか、大僧正は驚きのあまり、ただひたすら目を白黒させている。
「あり得ない……! だってあの杖は、父上がサイモン殿と旅に出るときに手にしていたもの……!? なぜこんな馬の骨風情が持っているんだ!?」
「なぜも何も、本人と会ったからな」
「はぁ?!」
しれっと話すユウリの発言に、とうとう大僧正の口が塞がらなくなった。
「と言っても幽霊だがな。ついでにイグノーから、このオーブも受け取った」
ここぞとばかりに鞄からグリーンオーブを取り出すユウリ。それを見た大僧正の顔が蒼白した。
「そ、それは伝説の不死鳥、ラーミアを復活させるためのオーブ……!! まさか、まさか本当にあなたは……」
「最初から言っているだろ。勇者だと」
きっぱりと言ったその言葉に、今度こそ大僧正は崩れ落ちた。
「なんかよくわかんねえけど、とりあえずあのオヤジに一泡吹かせることは出来たわけだな」
大僧正の数々の情けない姿に、ナギがにやりと笑う。
「やれやれ、だから父上はお祖父様を越えられないんだ」
すると、今まで傍観していたマーリンが、大僧正の前に歩み出た。
「仮に本物の勇者だとして、どうしてそこにいるクズを仲間にしているのか、理解に苦しみますね」
「……っ!」
「たとえ姉上が僧侶に戻ったとしても、おそらく戦力にはならないと思いますよ」
凍りつくような冷たい眼差しをシーラに向けながら、マーリンは低い声で言った。
「悪いが、実の姉を人間扱いしていないような奴の言うことは信じないようにしている」
ユウリもまた、絶対零度の視線を、マーリンに放つ。
「勇者だと言う割には、人を見る目がなさそうな方ですね。残念だ」
「そういうあんたも、尊敬する人間を間違えてるんじゃないか?」
お互い一歩も引かない毒舌合戦に口を挟める隙もなく、私は心の中でマーリンに対する怒りを必死で抑えながら、事の成り行きを見守っていた。
するとマーリンは、ユウリに一歩近づくと、未だ仄かに輝き続けるイグノーさんの杖を掴んだではないか。
「どこでどうやって手に入れたか知りませんが、勝手に一族の持ち物を奪わないでもらえますか?」
そう言うと、マーリンは強引にユウリから杖を取り上げようとした。しかし力の強いユウリが杖を奪われるはずもなく、マーリンがいくら引っ張っても杖はびくとも動かない。
「勝手なのはお前らだろ。今までこれの存在すら知らなかったような奴に渡せるか」
まるで赤子の手を捻るかのように、杖ごとマーリンの手を振り払うユウリ。その行動にプライドを傷つけられたのか、マーリンは顔を真っ赤にして眉を吊り上げた。
「まさかこんなところにあると思わなかったから気づかなかっただけです! 早く返してください!!」
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