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くらいくらい電子の森に・・・
第二章
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やけくそだ。どうにでもなってしまえ。
「お、いいノリになってきたじゃないか!よーし花柄ワンピだな!」
ノリノリの紺野さんが花柄ワンピースをクリックする。こかぽかこかぽかぽん、しゃららららららーらららーてぃろりろりん……へんなBGMがループする。顔を上げなくても分かる。僕らは今、この店の注目の的だ。僕は必死で自分に言い聞かせる。

……落ち着け。今取り乱したら、恥を別ベクトルに上塗りだ……

「お…おぉー、見ろ姶良!」
仕方なく顔を上げた刹那、全ての羞恥心が吹き飛んだ。「カスタマイズ」と聞いたときに感じた「嫌な感じ」すら。適当に選んだ花柄のワンピースは、意外にも体にフィットするタイプで…ビアンキのしなやかな体のラインが、淡い桃色の花柄に包まれて映えていた。スカートも、思ってた以上に…こう、短い!許容範囲ギリギリといった感じだ!金色の髪をおろして、花柄と同じ色のリボンをカチューシャのように、ふわっとかけているのも、なんかもう、ぐっとくる。
「ご主人さま…似合いますか?」

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ビアンキが、はにかんだような上目遣いで僕を見ていた。

「…に、似合うよ!超似合うよビアンキ!!」

バイト先の女子の私服姿を街中で発見した時みたいに、思いがけず胸が高鳴った。僕はつい、ここが飯屋の中であることも忘れて『に、似合うよ!』などと口走ってしまった。…パソコン相手に。

「これ、もらっていいんですか?…うれしい!」

ビアンキはチェレステの瞳をきらめかせて、体を抱きしめるようにしてくるくる回った。ビアンキが喜んでくれて嬉しい。

僕はその後、自己嫌悪で講義を1日休んだ。



……今思い出しても、懐かしさと悔恨で胸が締め付けられる、この日の、この瞬間。
もっと、「気にしてあげる」べきだったな…と。

推理小説を読んでいて「あれ?ここなんか変な表現だな」と感じることがある。僕も、多分他の大多数の人たちも、その時はただ読み進めたくて、もっと続きが知りたくて、わずかな違和感は通り過ぎてしまう。そして物語の終盤になって気づくんだ。あの「違和感」こそが、真実の答えだった…って。僕はそんなとき「あー、やっぱりあそこ違和感あったんだよね!」…と、あたかも自分は謎を解いてたような気分になる。

だけど、僕がこの現場に居合わせた探偵だったら、連続殺人事件は藪の中なんだ。
そして最後の犠牲者は、僕の前にむごたらしい骸をさらすだろう。
最後に気がついても、もう遅い。最後の惨劇を許してしまった小説は、もはや推理小説なんかじゃない。

低俗で残忍な、ホラー小説だ。

…このとき感じた「嫌な感じ」を、もっと深く突き詰めて考えていれば、
ビアンキも、僕も、もっと違ったエンディングを迎えられたのかな……



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