第二章
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それでもビアンキがおいしそうにリンゴを頬張るのを見ていたら、僕も腹が減ってきた。じゃ、僕も朝飯を……
と腰を上げた途端、ちゃぶ台の上でスマホがブルブル振動し出した。
「…はい、姶良」
『よう、今大丈夫?』
待ち受けには「紺野」と表示されている。
「あ、大丈夫。…どうしたの、こんな朝早く」
『朝早くかよ、この時間が。いいな学生は』
「紺野さんだって学生時代あったでしょうよ。で、どうしたの」
『いいソフト見つけたんだよ。MOGMOGの。今日ヒマか』
「んー、二限が終われば、まぁ」
『昼飯時だな。新宿の「鐘や」で待ってる。分かるか』
「あ、うん知ってる、でも」
『じゃーな』
紺野氏は一方的に言うと、さっさと電話を切ってしまった。
…鐘やの豚カツ茶漬けは旨いんだけど…
正直、カツ茶漬け定食1200円は、学生のランチにはハードルが高い。僕にとっては、金があるときに恐る恐る出向く店の一つだ。
そして今は……
――結局、柚木からせしめることに成功した5000円が、手元にある。
よし、決まりだ。今日の昼飯は鐘やの豚カツ茶漬け。朝飯は抜いていこう。
鐘や2階の喫煙席で、紺野さんは待っていた。
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「今日はちゃんと食ってるか、食い詰め学生」
「何も食ってないよ…」
「お前、若いうちはそれでもいいかもしれないけどな…」
「紺野さんがお昼『鐘や』なんて言うからだよ」
席に着くと、紺野さんがメニューを突き出した。手で制して、店員に豚カツ茶漬けを頼む。
「よく来るのか?」
「2,3回来たきりだよ。高いもん…で、MOGMOGの支払いなんだけど、分割でいい?」
「あー、あれはもういいよ。俺が無理やり入れたようなもんだから。これで金取ったら押し売りになっちまう」
「そんな!悪いよ。MOGMOG入れて良かったと思ってるし。絶対払うよ!…あ、来た」
頼んでからものの数分で、豚カツが運ばれてきた。半分は普通に食べて、もう半分をお茶漬けにするのが決まりだ。
「…で、最近どうだ、ビアンキは」
香ばしい豚カツの香気に鼻の下を伸ばしていると、紺野さんが尋ねてきた。…いけない、豚カツに気を取られて年配者に気を使わせてしまった。
「ビアンキ…ビアンキはまぁ、元気だよ」
でも早く食べたい!鉄板の上でじゅうじゅう焦げている、あっつあつのカツを一切れ、キャベツと絡めて頬張る。
「……ただな……」
僕は、ビアンキをインストールして2日目の事件を思い出していた。
その日は課題のレポートの仕上げに取り掛かっていた。学校で使っているパソコンからテキストに落とした資料をメールに添付して、僕のノートパソコンに送って、後は家で仕上げるだけ。
課題の提出を一回でも怠ると、普通に「不可」が
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