第五章 トリスタニアの休日
第六話 キス!?! キス?!?
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後悔に染まった少女は、その後最後の眠りにつく直前、ある夢を見た」
士郎の脳裏に、決して色褪せることのない少女との出会いが流れる。
「その夢の中で少女はある少年と出会うことになる。その少年は少女にとっては余りにも未熟であり、そして理解の出来ない存在だった。そんな少年と夢の世界で、彼女はとある目的のため、共に戦い、生活するようになった。時に喧嘩をすることもあったが、飛ぶように過ぎ去る日々の中、何時しか少年は少女に恋をし、少女もまた少年を憎からず思うようになった」
「恋を……したのですね」
アンリエッタが士郎の背中から顔を離し、士郎の後頭部を見上げポツリと呟いた。
士郎の話しは続く。
「そんな時、少女にある男が取引を持ち出した。取引の内容は少年を殺せば、お前の望みを叶えてやるというものだった」
アンリエッタが息を呑む音が狭い部屋に響く。
「愛する祖国と民を守るため、少女の望みは祖国を護れなかった自分よりも王に相応しい者が王になること。男の言葉に従い、少年を殺そうとした少女だったが、最後に男の言葉を拒絶し、少年を選んだ」
「その人は、国よりも愛する人を選んだのですか?」
「さあ……その理由の本当のところは本人に聞くしかわからないだろう……ただ、その時彼女は少年を選んだのだ。そして、最後の戦いが終わり、少女の夢が覚める時が来た……」
「……覚めてしまうのですね」
「…………俺が彼女の最後は後悔を抱き死んだと言わない理由はな……彼女が夢から覚める直前……浮かべた顔が……とても幸せそうだったからだ」
「……幸せ、そう」
士郎の背中に抱きつくアンリエッタには見えなかったが、士郎の顔にも、幸せそうな笑顔が浮かんでいた。
「ああ、とても綺麗な……綺麗な笑みだった……だから、彼女の最後は後悔で満ちたものではないと……そう思う」
「……そう、ですか」
ほっと息をアンリエッタがつくのが聞こえた士郎は、優しく腹に回された腕を外すと、身体を回し、アンリエッタと向き合いになる。目尻に涙が浮かぶアンリエッタに微笑むと、アンリエッタも同じように赤く染めた顔に微笑みを浮かべた。
「アン……少年が少女と出会った時、少女の王としての話しは既に終わっていた。終わってしまった、もう既に起きてしまっていた。だが、君はまだ始まったばかりだ。変えていくことが出来る。だからこそ、望んでではなく、必要に駆られて王になった君が、どうしても逃げたいと望むのならば、俺はその力になろう」
「王が居なくなれば……国が滅びます」
顔を俯かせ呟くアンリエッタの頭に手を乗せ撫ではじめる。ゆっくり優しく。そして丁寧に。
「今まで大丈夫だったんだろ。それに、代わりの王が立つ間ぐらいは、俺が何とかしてみせる」
「無理ですよ」
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