第五章 トリスタニアの休日
第六話 キス!?! キス?!?
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安宿の狭いベッドの上。
アンリエッタが眠る横、士郎は汚れた窓の向こうに見える、日が落ち、雨が振る街を眺めていた。
アンリエッタが眠りにつき暫らく経つと、そろそろ起こそうかと士郎が後ろを向くと、まるでタイミングを図ったかのようにパチリと目を開けたアンリエッタと視線が交わる。
士郎と視線が合うと、ふっと緩んだ笑みがアンリエッタの顔に浮かんだ。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
後ろ手にゆっくりと仕草で起き上がったアンリエッタは、起き上がった勢いそのままに横に座る士郎に寄りかかった。アンリエッタの身体を背中で受け止めた士郎は、後ろを振り向くことなくアンリエッタに話しかける。
「どうだ気分は?」
「……恥ずかしいところを見られてしまいましたね」
「う……む……すまない」
ガクリと首を落とす士郎の背中に、コツンと額を当てたアンリエッタが穏やかな声を漏らす。
「謝らないでください……ふふ……また、あなたに助けられてしいましたね」
「また?」
「あなたは……止めてくださいました。あの夜、流されるまま操られたウェールズさまに従っていたわたくしを……あなたは……止めてくださいました」
「……」
「……シロウさん……あの時……何故あなたはあんなことを言われたのですか……」
「あんなこと?」
腕をゆっくりと伸ばし、士郎の身体に腕を回す。
「『女王の地位を捨て、誰かと共に生きたいと言うのなら、俺は別段止める気はない。場合によっては力になっても良いだろう』」
「それは……」
「一言一句覚えています……何故……あなたはあんなことを……」
「…………」
「……シロウさん」
問い詰めるわけでもなく、ただ純粋に理由を聞くアンリエッタに無言で応えていた士郎だったが、
「……昔……とある王がいない国に一人の少女がいた」
「え」
「その国は、前任の王があまりにも強すぎたため、跡を継げるものがいなかったのだ」
目を閉じると、昔を思い出すように語りだした。
「…………」
「そんな時、王がいない隙を狙い侵略者が現れた。王がおらず諸侯の纏まりに欠けたその国には、侵略者を退けるだけの力はなく。少女が住む国は次第に荒廃していった」
腹に回された手に自身の手を重ねた士郎は、昔話しを続ける。
「……だから……その少女は……祖国を愛するその少女は……愛する祖国を守るために、抜いたものが王となるといわれる剣……岩に突き刺さった選定の剣を引き抜き……王となった」
「王に……王になったその少女は……どうなったのですか」
腕に力を込め、更に士郎を強く抱きしめたアンリエッタは続きを促す。
「侵略者は強く、祖国を守るためには諸侯を纏め上げ導く必
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