第二百七十七話 神殿に入りその十
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「この先にな」
「そうですか、では」
「我々は、ですか」
「これまで、ですか」
「いいか、門を開くが」
それでもというのだ。
「決して門の中は見るな」
「そこにクトゥルフがいる」
「だからですね」
「その中は見ない」
「見てはならないですね」
「見れば気が狂う」
そうなることを話した。
「それは知っているな」
「はい、クトゥルフを見ればです」
「それだけで気が狂います」
「並の者なら」
「そうなるからだ」
それ故にというのだ。
「絶対にだ」
「入ってはいけない」
「見ることもですね」
「なりませんね」
「絶対に」
「後ろを向いていることだ」
扉を開いた時はというのだ。
「いいな」
「わかりました」
「そうさせて頂きます」
「狂わない為に」
「その為に」
「相手は神だ」
クトゥルフがそうであることも話した。
「侮るなぞ愚の骨頂だ」
「ですね、どんなものでも侮ってはいけないですが」
「それでもですね」
「神は特にですね」
「侮ってはならないですね」
「人なぞ神の前では塵芥だ」
英雄はこうも言った。
「そうだな」
「はい、確かに」
「その通りです」
「そこまで神は偉大です」
「とてつもない存在です」
「そうである存在を侮ってはならない」
絶対にという言葉だった。
「いいな、ではだ」
「はい、それでは」
「その様にします」
「それではです」
「我等はそうします」
「ではな、狂っても治せるが」
そうなろうともというのだ。
「最初からだ」
「狂わない」
「それに越したことはないですね」
「ではですね」
「我等は」
「背を向けろ」
今この場にいる全将兵達に告げた。
「ここは俺達に任せろ」
「わかりました」
「その様にします」
「それではです」
「我等は」
「見ないことだ」
クトゥルフ、この神をというのだ。
「そしてここで待っていろ」
「そうしていてくれよ、それでな」
久志は将兵達に笑って話した。
「俺達が帰ったらな」
「その時は国を挙げて祝う」
英雄も言ってきた。
「二つの浮島でな」
「酒も美味いものも楽しんでな」
その様にしてというのだ。
「祝おうな」
「そうするからだ」
英雄はさらに言った、顔も口調もいつも通りの無表情なものだがそれでもそこに人を安心させるものがあった。
「安心してだ」
「そこで待っていろよ」
「わかりました」
将軍の一人が応えた、オリハルコンの武具が黄金色に輝いている。
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