第四十八話 暑くてもしっかりとその十
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「あったのよ、逆に偉人でもね」
「とんでもないところあったりするわね」
「ベートーベンはそうでしょ」
「ええ」
一華もその通りだと答えた。
「かなりお付き合いしにくい人だったのよね」
「物凄く尊大で気難しくて癇癪持ちで頑迷でね」
「そのせいで嫌われていたのよね」
「音楽の才能は凄かったけれど」
それこそ天才の名を欲しいままにしたモーツァルトと並び称されるまでにだ、尚モーツァルトも色々奇矯な話が多い。
「敵もね」
「物凄く多くて」
「生きにくい人だったのよ」
「そうらしいわね」
「兎に角すぐに怒って」
その癇癪のせいでだ。
「ものを投げてくるから」
「家政婦や生徒さんは大変だったのよね」
「世渡りも下手だったし」
「そういうの絶対に得意じゃないわね」
「ゲーテとも大喧嘩したし」
たまたま一緒に散歩していた時にゲーテが自分が恩を受けている貴族の馬車に一礼したのを見て何故ゲーテ程の偉大な人物が貴族なぞに頭を下げたのかと怒ってのことだ、ゲーテは恩人だからと言ったがそれで引き下がるベートーベンではなかったのだ。
「もうね」
「生きにくい人だったのね」
「確かに高潔で公正だったけれど」
その人間性はだ。
「真面目でね」
「その反面そうした人だったのね」
「そうよ、欠点もね」
人間的なそれもというのだ。
「多かったのよ」
「コミュニ障害だったのね」
「かなりのね」
母も否定しなかった。
「ワーグナーと同じだけ敵が多かったわ」
「ワーグナーもそうみたいね」
一華はまた応えた。
「借金の山に女癖の悪さに」
「あと図々しくて尊大でね」
「とんでもない人だったのよね」
「今だとスキャンダルの塊よ」
この音楽家はというのだ。
「借金踏み倒しまくって弟子の奥さん奪ったのよ」
「最低よね」
一華も思わずこう言った。
「弟子の奥さん獲るって」
「そうした漫画もあるらしいけれど」
「地で行った人だったのね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「そんな人だったのよ」
「ワーグナーも偉人だけれど」
そう言っていい人物だがというのだ。
「充分過ぎる程ね」
「最低だったのね」
「偉人でもそうなのよ、問題がある部分はね」
「誰でもあるのね」
「そうよ、あんた確か伊藤博文さん好きよね」
「大好きよ」
娘は母に即座に答えた。
「何かと凄いことしたのに気さくでユーモアがあってね」
「明るい人だったそうね」
「もう痛快な」
一華は笑って話した。
「面白過ぎる人じゃない」
「けれど知ってるでしょ、あの人も結構ね」
「物凄い女好きで抜けてるところもあったのよね」
「お家なんか適当で」
このことを同じ長州出身の山縣有朋がどうかと思っていたという。
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