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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十話 孤立無援
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で話を聞こう。ブラウンシュバイク公もいる、その方が良いだろう」
『……分かりました』
「で、何が分かった」
『捕縛した地球教徒ですがサイオキシン麻薬の禁断症状を起こしている者がいます。それも一人や二人ではありません。禁断症状を生存者の半数近くが起こしています』
「サイオキシン麻薬だと……。間違いではないのか」
『間違いではありません、サイオキシン麻薬です』
侯がわしを見た。信じられないといった表情をしている。
『症状から見ますとかなり長期に亘って使用していたと思われます。また遺体からもサイオキシン麻薬が検出されました』
「馬鹿な……、長期に亘って? 何処からサイオキシン麻薬を入手したのだ……」
呻く様な侯の口調だ。
「ラング局長、訊きたい事が有る」
『はい』
「教団からの押収物の中にサイオキシン麻薬は有ったのか?」
わしの問いかけにラングが面目なさそうな表情を見せた。
『当初、警察はサイオキシン麻薬を見つける事は出来ませんでした。しかし再度捜索したところ……』
「捜索したところ?」
『大量のサイオキシン麻薬を処分したと思われる痕跡を発見しました』
「馬鹿な……、有り得ぬ」
侯が呻く様な口調で吐いた。同感だ、アルレスハイムの敗戦後、帝国、同盟、共にサイオキシン麻薬の撲滅に躍起になった。密造組織、密売組織、使用者、その全てを叩いたはずだ。あれから三年、地球教は大量のサイオキシン麻薬を所持していた。何処から入手した? 生き延びた組織が有ったという事か?
『残念ですが入手先については未だ判明しておりません』
「軍は何と言っている?」
『いえ、まだ知らせていません……』
「何をしている! 協力しろと言ったはずだぞ!」
リッテンハイム侯の怒声にラングが謝りつつも言い訳をしようとする。侯がそれを遮った。
「三年前のサイオキシン麻薬対策は憲兵隊が主力となった、何らかの情報を持っているかもしれん。直ぐに問い合わせろ! この件が帝国の、いや人類の大事だという事を忘れるな!」
ラングが直ぐ軍に問い合わせると言って通信を切った。それを見て侯が腹立たしげに舌打ちした。
「全く馬鹿どもが何も分かっていない」
「内も外も敵だらけだな、侯」
「全くだ」
暫く無言のままだった。侯は気を静めようとしたのかもしれない。口を開いたのは大きく息を吐いた後だった。
「サイオキシン麻薬か……、公、同盟にも知らせた方が良くは無いかな。協力する必要性を訴える事になると思うのだが」
「なるほど、悪くない考えだ。レムシャイド伯を通して知らせよう……」
これで同盟側でもサイオキシン麻薬が見つかれば言う事無しだな。
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