第一章
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ー、認証コード出たねー。えーと……9,8,A,R…」
紺野氏は嬉々としてCDケースの認証コードを打ち込んでいく。いいのかなぁ…柚木、怒るだろうなぁ…
「おい、パスワードはどうする?」
「パスワード……じゃ、76ccb3…」
「なんだそりゃ」
「秘密……あれ?」
……パスワード?……認証コード……?
認証って、していいんだっけ……?
……もういいや…眠い……考えるのが眠気に追いつかない……あ、右肩が温まってきた……太陽があったかいや……
「な、な、な、なにやってんのよ――――――!!!」
突然の絶叫に、心地よい眠りの帳を破られて、がばと起き上がった。
「姶良っ!!……あんた……私のMOGMOGに何をしたっ!!!」
「………は」
カツカツという小気味よい足音に釣られるように、ゆらりと頭を上げると……目やにでかすむ視界の向こう側に、軽いウェーブのかかったショートヘアの輪郭にオレンジがかった桃色の唇。…もう少し視線を上げると、黒目がちなのに冷たい瞳と目が合った。…本当に、今日はどこに行っても、何をやっても寒い日だ…。
…一生懸命目をしばたかせて意識を通常レベルに戻すと、僕はうすぼんやりと、自分が死地っぽい場所にいることに気がついた。
怒りのあまり、顔を紅潮させた柚木の顔が、目の前にあったから……
「おっ……女……!?」
認証完了したことを示す電子音に、紺野氏のこわばった声が重なった。
……なんか、空気が重い……
「あ……ごめん、その……時間があったから、中見せてもらおうかな……って」
「認証コード、入れたよね」
朝の空気みたいに、冷たく澄みわたった柚木の声。……潮がひくように、僕の眠気が醒めていった……
「…パスワードも、入れたよね?」
「……あ、……そ、そう、だった……僕のパソコンに認証………!」
柚木は、眠気とショックで崩れ落ちていく僕から視線を外すと、くしゃくしゃに破られたMOGMOGの包装に視線をさまよわせ……おもむろに、紺野氏に照準を合わせた。
「姶良をそそのかしたのは、あんたね……?」
バネで言えば収縮するような、津波で言えば、遠く、遠くまで潮が引いた一瞬のような…そんな声だ。
「や、その……おい、姶良ぁ…彼女なんだったら最初からそう言えよぉ…」
「……だれが彼女だっ!!!」
柚木が溜めに溜めた怒りを一気に放出した。
……眠気は相変わらず酷いもんだったが、僕にも分かった。紺野氏は、僕が同級生にひどい扱いを受けたと思って(実際に相当ひどい扱いを受けたんだけど)昼行灯な風情の僕に代わって一泡ふかせてくれるつもりでいたのだろう。
どうせ日照不足なかんじのモヤシ野郎が来るだろうから脅しつけてやろうと思っていたら(性格を差し引けば)意外にも可憐な女子が怒
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