壱ノ巻
毒の粉
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「ひまぁ・・・」
あたしはごろん、と転がった。
畳の匂いが鼻を突く。
「ひまだなぁ・・」
本当に、何にもすることがない。
あれから、あたしは柴田家を探し当てて、そこの門前で、門番に声をかけた。
柴田家は有名だからすぐ見つかった。
「あのぅ・・すみません」
河原の石で揉んだ衣に薄汚れた顔。工作はバッチリよ。
「何だ女。物売りならば裏へ回れ。客引きであれば大殿様は間に合っている。帰れ帰れ」
しっしと門番はにべもなく手を振る。
「私は、石と言います。戦で家族を皆亡くしました。お伺いすればここは慈悲深く聡明で有るという柴田様のお屋敷。私がここにたどり着いたのも神のお導き。どうか、私をここで雇っていただけないでしょうか」
途端に門番は目を輝かせた。
「わ、わかった。そういうことなら話は別だ。ちょっとまっていろ。今、大殿様を呼んでくるからな」
かくして、怖いほどに話はすいすいと進み、今こうして侍女として雇ってもらっているわけだけど。
あの〜、あたし、仕事、何にもしてないんですけど?
それなのに誰もあたしを叱ったりしないのは、何か思惑があるからか。
一人部屋も貰っちゃったりして。
ごろん、と転がったら、目の前にぬっと顔が出た。
つるんとした頭にしわくちゃの顔。
「でたぁ!」
「…………石」
「あ、お、大奥様!」
あたしは慌てて飛び起きた。
「も、申し訳ございません!」
「大殿がお呼びです。いらっしゃい」
上座には偉そうにふんぞり返っているデブなおじさんと、若い女。そして、あたしと大奥。
「おお、来たか石」
「大殿様におかれましては、ご機嫌も麗しく、まこと…」
「口上は結構。発がそういうものを嫌がるのでな」
なあ?というふうに柴田は隣の若い女を見る。20前後に見える女は、ふん、と鼻を鳴らした。眉間には皺が刻まれ、目尻はきつくつりあがっている。大奥様とそっくりだ。
と、いうことはこの女の人は、柴田と大奥様の子だろうか。
「石、この子はわしの娘で発と言う。お前は
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