第二部 1978年
影の政府
米国に游ぶ その3
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サキは、斜めになっていた体を起こして、真剣に聞き入った。
「今、全世界を二分した超大国ソ連は、BETA戦争の結果、衰微した。
この事は、間もなくソ連の影響が強い中東、特にシリアや、アフリカの社会主義国に影響する。
それにこのまま、米国がG元素を使った新型爆弾を作れば、核の傘によってできた大国間のバランスは崩れる。
そうすれば、また40年前の様に大国間の世界大戦になると思うのだが、先生はどうですか」
「あのケネディが言っていたが、核というのは「ダモクレスの剣」だ。
核ミサイルという使えぬ兵器があってこそ、米ソの冷戦構造がなり得た。
これが19世紀末から世界大戦前のベル・エポック(Belle ?poque)期の様に、大型戦艦や重機関銃であったのであれば、間違いなく億単位の人的被害が出た。
ハンガリーやチェコスロバキアの人間には気の毒だが、あの軍事介入は、所詮地域紛争の域を出ない。
俺は、イスラエルやイラク、シリアなどが核武装をして、互いに牽制し合うことこそ、中東紛争を鎮静化させる妙薬となると、信じている。
印パ戦争が、この世界でも収まったのは、インドがソ連からの核技術を得て、核実験をした影響が大きい。
あんなBETAとかいう化け物の所為ばかりではない。そう確信している」
「じゃあ、先生はG元素の拡散には賛成なのかい」
「フフフ、俺は、あの化け物の成分を使った新型爆弾の拡散には反対だ。
あんなものに頼らなくても、このゼオライマーが、次元連結システムがある限り、無敵よ」
「じゃあ、帝国政府が持つのも反対だと」
「ああ、あんな自制心の無い連中には、次元連結システムはおろか、G元素でも危険すぎる。
精々、威嚇用に、核弾頭を御座所の近くに展示して置くぐらいでいいと思ってる」
マサキは、自説を全て詳論して見せた。
このような内に秘めたる思いを人に語ったのは、おそらく今日が初めてであった。
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