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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
米国に游ぶ その3
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「ああ、1時間ほど前かな、俺の方にフェイアチルド・リムパリック社の社長さんが、あんたと会いたいと、連絡があった。
向こうの監視員(ウォッチャー)を通じて、なんでも米軍に正式採用されたばかりのA-10という重武装の中距離支援用戦術機の改良をしてほしいと、相談を受けた。
天のゼオライマーだっけ、その戦術機の強力なエンジン出力を参考に、跳躍ユニットを作って欲しいってね。
そうだ、夕方に、ニューヨークの老舗レストランで御剣公と会食される予定だから、都合をつけてくれないか」
マサキは、今更みたいに、
「待ってくれ、俺は下士官だから、彩峰(あやみね)の許可を得ねばなるまい……」
等と渋っているも、白銀は、
「じゃあ、18時に、ウォール街のど真ん中にあるデルモニコス(Delmonico’s)で会いましょう」
と、困惑するマサキをよそに帰ってしまった。
 その様を見ていた鎧衣は、肩をすくめて、
「全く困ったものだよ」と、唖然とするマサキの前で、おどけて見せた。


 マサキは、国連本部ビルのあるマンハッタン区国連広場からタクシー乗り場に一人で歩いていく。
後ろから怪しげなホンブルグ帽を被り、雨傘を持った男が近づいてきたので、流しのタクシーを捕まえ、乗り込む。

イースト川に沿って立つ高速道路のFDRドライブ(Franklin D. Roosevelt East River Drive)を走り抜け、マンハッタン島を南に下る。
マンハッタン島南端のバッテリー・パークで高速の高架から降りると、車はウォール街に向かった。
 埋め立て工事中のバッテリー・パーク・シティを横目に見ながら、老舗ステーキレストランのデルモニコスにまで来ていた。
ドレスコードに、ややうるさい店なので、プレスの掛かった勤務服で来たのだが、ビジネスマンばかりのなかでは浮くような感じがしてしまった。
(ドレスコードの例外として、軍服は野戦服であっても、舞踏会に参加できる為)
少しばかり後悔したのは、気の利いた私服でも着させた美久でも連れてくれば良かったと。
もっとも、美久はアンドロイドなので食事はしないが……

テーブルに案内されるなり、紋付き袴姿の御剣に、
「ハハハハハ、木原よ。密談に、軍服姿なんて考えられるか、常識の外だな」
と笑い飛ばされ、顔を顰めた白銀に、
「目立ちたがり屋なんですね」と嫌味を言われてしまった。
流石に昼間とは違って、頭をポマードで綺麗に撫でつけ、チョークストラップのスーツを着ていた。
マサキは気にする風も無く、不敵の笑みを湛え、
「俺に会おうという社長は、奥にいる白人の爺か」と白銀に訊ねると、
「こちらがフェイアチルド・リムパリックの社長さんだ」と、立ち上がり、右手で上座の老人を指し示した。
「木原だ。よろしく頼む」と、
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