第二部 1978年
影の政府
米国に游ぶ その3
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思いに耽った。
年次総会の休憩時間、会議室から抜け出して、屋外の喫煙所で休んでいると、
「ゼオライマー建造の科学者、木原先生って、アンタだろう」と、声を掛けて来る者がいた。
慌てて振り返ると、地毛であろう茶色い髪を、坊ちゃん刈りにした男がいた。
御剣といた護衛であったのを、覚えていたマサキは、
「おい。貴様は、御剣の……」と、彼が言い終わらぬ内に、男が重ねて、
「氷室さん。今から博士借りて良いかな」と、マサキの肩を叩いて、
「アンタみたいないい男は、もっと遊ばなきゃだめだよ。俺と付き合ってよ」
と、困惑する美久の前で、マサキを誘い出そうとした。
侮辱するような言葉に、さすがのマサキも怒って、
「なんだ、その恰好は。フラノのシャツにジーンズ。それにダウンベストか。
ここはキャンプ場じゃないんだぞ。」
と、遊び人風の仕度をする男を左手を振って、追い返そうとした。
すると鎧衣が寄って来るなり、
「ここにいたのかね、木原君、探したよ」と、相好を崩した。
「鎧衣、この男は」
「彼は陸軍省から派遣された白銀影行君だ。
CIAと仕事をした事がある人物で……」
茶髪の男は、慇懃に挨拶をした後、
「よろしく、木原先生。じゃあ俺の事は、遊び人の影さんって呼んでよ」と応じる。
マサキは、はっと気が付いた。
この男は、帝国陸軍の情報将校を育成する中野学校の卒業生だ。
陸軍では認められない長髪に、砕けた私服。およそ将校らしからぬ口に聞き方。
恐らくマサキを揶揄う心算だろう。自分を連れ出そうとしたことに呆れた。
白銀は、マサキをまじまじと眺めながら、
「冴えない顔してるな、例のかわいこちゃんに冷たくされたのかい」と、言った
マサキは、白銀の問いに、声の無い笑いを持って、
「フフフ。白銀よ、軽々しく、アイリスディーナのことなど口にするな。
この木原マサキ、一婦女子にかまけるほど、暇ではないのは分かって居よう」
と、誓っていたが、どうも本気とは思われない。
白銀が少し白い歯を見せると、マサキは図に乗って言った。
「それに俺が東独まで出掛けたのは、日本政府の都合だろうが……」
「そうか。いわれてみれば、俺達、帝国政府にも責任があったことか。
なんなら、木原先生、それすらも忘れさせる刺激を授けましょう。男らしい、でっかい話をよ」
マサキは、タバコを吸おうとホープの箱を取り出すなり、
「ところで、白銀よ。お前がいうデカい話とやらを聞こうではないか」
紫煙を燻らせながら、平静を装って訊ねた。
本当は、白銀の言う話とやらが気になって仕方がなかったのだ。
内心、この世界に、どの様な変化を与えるか、ワクワクする自身が居た。
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