第六十三話 クロプシュトック事件 T
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ック侯の件だろう。先日の園遊会以来、彼の姿を見た者は居ない。屋敷は廃墟と化しているし、非常線にも引っ掛かる事はなかったから、フェルナー大尉が推察した通りブラウンシュヴァイク公爵邸に現れたのは替え玉で、侯本人は既に自領に戻り反乱の準備を進めているのだろう、と予想されていた。
「お待たせして申し訳ない。御前会議の結果、クロプシュトック侯爵は大逆罪の罪人として討伐される事が決定した」
執務室に入るなりミュッケンベルガーはそう言った。奴の顔にも深い憂慮が見てとれた。
「大逆罪、ですか。何ら証拠は…申してもせんなき事ですな、で、どなたが討伐に当たるのですかな」
「当初、グリンメルスハウゼン侯とブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯が手を挙げられた。グリンメルスハウゼン侯は陛下の盟友と言っても過言ではないお方、ブラウンシュヴァイク公は面子を潰されておられる、リッテンハイム侯はブラウンシュヴァイク公への対抗心から…予想はしていた。だが、リヒテンラーデ侯がそれを抑えた。伯には何故かお分かりかな」
「反乱の波及を恐れているのでしょうな。グリンメルスハウゼン侯がもし敗れでもしたら、陛下は二重に恥をかく。それは陛下の治世を揺るがし兼ねません。ブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯が敗れてもそれは同様…両巨頭が抑えているからこそ貴族達は静かにしていますが、ブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯のお二人が頼むべき人では無い、と貴族達に思われでもしたら…その混乱は目も当てられぬ物になるでしょう。反乱とは言わぬまでも、似た状況があちこちで生起しかねない。軍としてはどうなのです?」
ミュッケンベルガーも伯も、手を挙げた連中が勝つと言わないのが内心おかしかった。
「最初に手を挙げられたグリンメルスハウゼン侯は元々遠征軍に組み込まれておりますからな。その点からも侯の討伐軍参加には反対した。まず軍としてはイゼルローン方面に対処しなくてはなりません」
「それは理解できるが…」
「それに遠征軍に組み込んでおきながらこんな事を言うのも何だが、グリンメルスハウゼン侯は軍事上の才能は余りお持ちではない。言わば皇帝陛下の名代、という位置付けなのです。その点から見ても、討伐軍参加は拙い。ブラウンシュヴァイク公も名目上、上級大将の地位に居られるが、あくまでも名誉階級。討伐軍の指揮を執れるとは思えない」
「では…」
「折衷案として、軍、貴族の両方の代表として伯に討伐軍の指揮を執っていただく。リッテンハイム一門からも援軍が派出される。伯の艦隊、一万五千隻とリッテンハイム一門のどなたか…になるが、五千隻、合わせて二万隻。伯は一時的に遠征軍から外れる事になる。リッテンハイム侯は人選と準備に猶予を欲しいとの事だったので作戦開始は六月五日…宜しいな」
「了解致しました」
「十日にはイゼルロー
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