第六十三話 クロプシュトック事件 T
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とそうだ。こんな時期に貴族が反乱を起こすとなると帝国政府は震えあがるだろう。しかもあの男のかつての政敵だ、妥協の余地はない。叛乱軍…自由惑星同盟と結びつく事は無いだろうが、それだけに個別に対処せねばならなくなる……
「そしてあの書簡です。書簡の内容が事実だとしても、今日の件といい時期的に都合が良すぎます。何者かが混乱を狙っているとしか思えません」
体制の混乱、宮中の混乱…。確かに都合が良すぎる。書簡の送り主は何かを知っているのだろうか。
「ラインハルト様」
ずっと大尉の話を黙って聞いていたキルヒアイスが口を開いた。
「調査が必要です。私とフェルナー大尉とで事の背景を調べてみようと思います。お手伝い願えるだろうか、大尉」
「望む所です。小官の主君にも関わりのある事ですから」
しかし既に出撃準備も整い、後は命令が出る日をを待つのみ…という今、キルヒアイスに調査をして貰うという事になると、下手をするとキルヒアイスはオーディンに残留しなくてはならないかもしれない…。
「アンネローゼ様の身を守らねばなりません、事が起きた時に我々二人ともオーディンに居ない、というのは拙いのではないですか」
「…そうだな、その通りだ。俺と離れる事になるが大丈夫か?」
「はは、そのお言葉、そのままお返ししますよ、ラインハルト様」
キルヒアイスに笑顔で返す。初めての別行動がこんな形でやって来るとは…。命令で離れ離れになる事もあると思えば、まだマシと思わねばならないが…。
「となると辞令が必要だな。キルヒアイス少佐の件は私から明日ヒルデスハイム伯にお願いするとしよう」
「はい。では少官からも公に言上申し上げます。いろいろと手回しも必要でしょうから」
フェルナー大尉か…優秀な男の様だ。アンスバッハやシュトライト…あの二人からも特段悪い印象は受けなかった。大尉も含め彼等の様な人物がブラウンシュヴァイク公の下にいるとなると、公もただの強突張りの御仁ではない、という事か。
5月24日09:00
オーディン軍宇宙港、ヒルデスハイム艦隊泊地、ヒルデスハイム艦隊、旗艦ノイエンドルフ、艦隊司令部、
ジークフリード・キルヒアイス
「了解した。構わないだろうか、参謀長」
「はっ。閣下の御意向に異存はありません。慣れない任務…任務とは言えないかも知れないが頑張ってくれ、少佐」
「はっ、ありがとうございます。状況はその都度報告致します」
ラインハルト様が少し寂しそうな顔をなさっている…心配ありませんよラインハルト様。アンネローゼ様は私にとっても大事な方です、誠心誠意勤めます…。
舷門に向かうと、舷門当番兵がフェルナー大尉が到着している旨を教えてくれた。開かれている搬入ハッチをみると、地上車の脇に所在無げに佇んでいる大尉の姿があった。
「お待たせして
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