第六十三話 クロプシュトック事件 T
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です。まだ公爵閣下と何やらお話し中です”
「そうか。ではこちらから司令官に改めて連絡しよう…二二〇〇時に私の自宅でどうだろうか」
“お邪魔しても宜しいのですか”
「わざわざ連絡して来た位だ、余人には聞かれたくない話なのだろう?」
“ご配慮、ありがとうございます。では二二〇〇時に”
自宅の住所を教えて電話を切った。改めて伯爵に連絡するとするか…。
5月23日22:00
リルベルク・シュトラーゼ、
ラインハルト・フォン・ミューゼル
「金髪さん、赤毛さん、お客さんですよ」
「はいはい、ただいま」
「こんな時間に来客だなんて。若いのに偉くなるのも大変よねえ、死んだうちの人とは大違いだわ」
クーリヒ夫人、フーバー夫人…この二人には頭が上がらない。さっきいただいたフリカッセ、まだ余ってるだろうか…。
「お邪魔しても?」
フェルナー大尉は時間通りに現れた。
「ああ、上がってくれ。キルヒアイス少佐も一緒だが、宜しいかな?」
「お二人で下宿されているのですか。仲がよろしくて羨ましい限りです、ええ、構いません」
キルヒアイスがコーヒーの支度にかかる。
「クロプシュトック侯はどうなったのかな?」
フェルナー大尉はブラックが好みの様だ。香りを楽しむと、一口、一口と少しずつ啜る。
「駄目でした。小官が侯爵邸に到着した時は、既に屋敷は火に包まれていたのです」
そこまで言うと、大尉は一気にコーヒーを飲み干した。
「大尉、おかわりは」
「ありがとうございます…同様に宇宙港も駄目でした」
「屋敷は火に、宇宙港も駄目…逃げ足の早い御仁だな」
「はい。行方が全くつかめません。既に自領に向かっていたのではないか…その様な気がします」
「しかしブラウンシュヴァイク公爵邸にクロプシュトック侯が現れてからそれほどの時間的余裕は無かったはずだが…」
二杯目のコーヒーにはたっぷりと砂糖とミルクを入れた大尉は、大事そうに両手でマグカップを抱えている。
「替え玉ではないかと…」
「替え玉??」
「はい。表舞台から遠ざかって約三十年、誰も現在のクロプシュトック侯を見たことが無いのです。変装用の精巧なマスクを被ってしまえば替え玉であったとしてもバレはしませんよ」
替え玉か…そんなものを用意していたとしたら計画自体がかなり用意周到なものと言わざるを得ない。しかも自領に戻っていたとしてもいずれ捜査の手は及ぶのだ。となると自領に戻って何をするか……。
「侯爵は反乱でも考えているのか?とても成功するとは思えないが」
「現在の時期に反乱…辺境の一部は既に叛乱軍が押さえ、帝国政府への信頼が揺らいでいる…成功するしないに関わらず、帝国を揺るがす事態だと思いますよ。かつての政敵として帝国政府、皇帝陛下に与えるダメージはあると思いますが」
言われてみる
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