第八十話 夏祭りが近付きその五
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「水臭いのはなしよ」
「だから着付けもなのね」
「いいのよ、むしろ親なら頼られる」
母は笑ってこうも言った。
「それ位でね」
「いいのね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「それ位でね」
「そうなのね」
「そう覚えておいてね」
「覚えるけれど」
それでもとだ、咲は母に微妙な顔になって述べた。
「遠慮と水臭いがどう違うか」
「その区分がなのね」
「どうもね」
これはというのだ。
「難しいわね」
「それはね」
母も否定せずに返した。
「言われてみるとね」
「難しい話よね」
「やっぱりね」
このことはというのだ。
「すぐにはわからないわ」
「そうしたものなのね」
「それもこれから生きていって」
そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「学んでいくことね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「経験を積んでね」
「人生の経験ね」
「今わからないことも当然よ」
咲に笑ってこうも言った。
「だって咲はまだ高校一年でね」
「十六歳まで間近で」
「まだまだ人生の経験はちょっとよ」
「ちょっとなの」
「ええ、これまで色々経験してきたと思うけれど」
このことは事実だがというのだ。
「それでもね」
「ちょっとなのね」
「まだまだよ、人生はね」
笑顔のまま言うのだった。
「二十五歳が暁ともいうし」
「それ白波五人男よね」
「そうよ、その最後の場面で言われるのよ」
極楽寺山門の場である、そこで出て来た日本だ右衛門がその山門においてこの言葉を出すのである。
「弁天小僧が立ち腹切ってね」
「立ったまま切腹ね」
「そうしてね」
これが極楽寺屋根上の場の結末である。
「嘆いて言うのよ」
「自分の手下で盟友でもあったから」
「盗賊でも絆は深かったみたいだしね」
これは五人男全員に言えることである。
「それでよ」
「何かあの人達泥棒って感じしないけれどね」
咲は白波五人男について考える顔でこうしたことを言った。
「あまり以上にね」
「それはね」
母も否定しなかった。
「お母さんも思うわ」
「滅茶苦茶目立ってるわよね」
「恰好いい位にね」
特に稲瀬川勢揃いの場である、尚この川は実は墨田川である。この作品は舞台は鎌倉となっているが実は江戸時代の江戸を舞台にしているのだ。
「紫の派手な刺繍が入った着流しでね」
「大きな字が書かれた傘を持ってね」
「下駄も穿いて」
「恰好いいけれど」
咲はこれは事実だと述べて言った。
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