第一部
第四章 いつだって、道はある。
五代目火影
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体に宿し、その呪いの能力故に父に疎まれてきたり、兄弟や姉妹たちからもあまり好かれなかったという話はマナやハッカから聞いていたし、彼自身も彼の妬みや羨望の生む力についての説明をしてはいた。恐らく幼い頃から母や兄や姉達の死について自責の念を持ち続けていた彼は、残された二人の肉親すら死んでしまったという事実に泣き続け、そしてこれは自分の所為だと、自分が呪った所為だと泣き続けた。
僕どういう顔してユヅルにあったらいいのかわかんないよと、チョウジがうつむいたまま言っていたのを思い出す。彼がユヅルに渡してくれと差し出してきた花束は病室の一角で淡い輝きを放っていた。
肉親の死はきっとショックだっただろうし、その間ずっと昏睡状態にあった自分を恨む気持ちもわかる。だけど呪いだ呪いだとユヅルが何度も繰り返すうちに、はじめの中には苛々が湧き上がりはじめていた。何年も内側にためていた負の感情は、ユヅルに矛先を向けたままに爆発した。
「呪いだなんてただの現実逃避だ。事実を受け止められないからこそ呪いの所為だと責任転嫁しているに過ぎない!」
「現実逃避なんかじゃない! はじめだってアイツを見たはずでしょ!? あいつは呪うんだよ。俺がうらやましいって思った人間をあいつが放っておいたことなんてなかった!! 兄さんも姉さんも母さんも、父さんや妹でさえあいつに、そして俺に奪われたんだ!! 俺がうらやんでたから、妬んでたから、だから!!」
「だからそうやってぐちぐち言うのをいい加減やめろと言っている!」
はじめが叫んだ。ユヅルは黙り込んではじめを見上げた。
「身近な人間の死を呪いだなんて言葉で片付けるな。身近な人間の不幸をなんでもかんでも犬神の所為にするな。憎むべき相手は木ノ葉崩しを起こした大蛇丸であってお前の中にいるくだらない犬神なんかじゃない」
すう、と息を吸う。ぐい、と顎を持ち上げて彼は聞いた。
「お前ごときの呪いはそんなに強いのか?」
「……!」
「お前なんかの呪いで私は死なないし、私が死んでもそれは私の選んだ道であってお前の呪いなんかの所為じゃない。お前の呪いなんかで私が死ぬわけがない。お前は自分がそんなに強いとでも思ってるのか? お前に親しい人たちの死を全て犬神と呪いの所為にするな。彼らの生死はお前なんかの呪いに左右されるようなものじゃない!」
もっともっと尊くて大切なものなんだ。お前の呪いなんかで終わらせられてしまうようなものじゃない。
はじめはそう言って、親指の唇を噛み切った。口寄せの術。彼に召喚された一羽の鳩が、くるっぽーと鳴き声をあげた。
「とっても暖かいだろう」
はじめに差し出された平和の象徴のその暖かさを手のひらに感じながら、ユヅルは鳩を抱き寄せた。とくんとくんと指の間で脈打つ心臓が感じられた。
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