プレーンシュガー
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ハルト》は誤魔化し、本来の自らの体へアイコンタクトを図る。
(可奈美ちゃん、分かってくれ……)
(うん! 大丈夫!)
可奈美のアイコンタクトに対し、ハルトはサムズアップを返す。
その表情を見て、可奈美は確信した。
(あ、これ全然伝わってないな)
真司、友奈、チノが待つホール。
二つのテーブル席を繋ぎ合わせた席に座る彼らの中心には、先ほど可奈美が盛り付けたプレーンシュガーの大皿が置かれていた。
「おおっ! すごい美味しそう! どうしたのこれ!?」
ハルトは目を輝かせた。
すると、真司が「へへっ!」と鼻を擦る。
「バイト先でもらってきたんだ。感想を教えて欲しいんだってよ」
「おおっ! それじゃあ、早速頂こうよ!」
ハルトは笑顔で手を合わせる。そしてそのまま、プレーンシュガーを掴み取った。
「いっただきまー……す?」
即、手づかみで口に運ぶハルト。だが、一噛み一噛みしていくたびに、その表情が陰っていく。
確実に舌の中で味覚を発揮させるものの、ハルトの疑念は晴れなかった。
「どうした?」
「何か、味が薄いような?」
真司の疑問に、ハルトは苦言を呈する。
真司は「そんなことないだろ?」と、自分の分のプレーンシュガーを取る。
そのまま彼が口にすると、その口元が綻んだ。
「うん、うまいぜ! やっぱりここのはすげえぜ!」
「わたしもいただきます!」
真司に続いて、友奈もプレーンシュガーを頬張る。
「うん! おいしい! 可奈美ちゃんも…………可奈美ちゃん……?」
友奈はそこまで言いかけて、口を噤んだ。
彼女の隣に座る、衛藤可奈美。静かに、何も語らず、その目からは涙が流れていた。
「ハルトさん……?」
ハルトは、その反応に目を白黒させていた。
ただ、何も言わず。可奈美は一口ずつ、プレーンシュガーを口に含んでいく。小麦の欠片を一つ一つ食していくごとに、その目に涙が浮かんでいく。
「ハルトさん……どうしたの?」
ハルトの声は聞こえていない。
可奈美はただひたすらに、プレーンシュガーを頬張っていく。それも可能な限り小さく、細かく。
少しでもその味覚を味わうように。
「ハルトさん……?」
「可奈美ちゃん、そんなにこのドーナツ好きだったのか! こりゃ、大好評だって教えてやらねえとな!」
ハルトの声は、やがて真司の大声に塗り潰された。
だが、今の可奈美には届いていない。ただ、無心にプレーンシュガーを小
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