第二百七十五話 邪神の島その十
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「そこでも最初に挙げていいな」
「そこまでのものだよな」
「死なない命あるものなぞない」
何があろうとも、というのだ。
「木ですらだ」
「何千年生きていてもな」
「やがてはその命が尽きる」
そうした木もというのだ。
「源実朝の死を看取った木もそうなった」
「また芽が生えてきてもな」
「一旦はそうなった、そして世を去り」
そうなりというのだ。
「生まれ変わりな」
「また出て来るな」
「そうなる、人はそうしてあらゆる世界を巡っていく」
輪廻転生を繰り返してというのだ。
「悟りを開くまでな」
「そして仏さんになるな」
「それまでは決してだ」
「輪廻から逃れられないでな」
「生まれ変わり続ける」
あらゆる世界の中でというのだ。
「そうなっていく」
「それが人間でな」
「命、もっと言えば魂だな」
「ああ、この世界でも何時かは死んでな」
「起きた世界でもな」
そちらでもというのだ。
「同じだ」
「やっぱり何時かはな」
「死ぬ」
絶対にというのだ。
「そうなる、ただいい死に方とそうでない死に方はある」
「死ぬにしてもな」
「自殺なんてするものじゃない」
英雄はこれは絶対だと述べた。
「何があってもな」
「自殺か、俺の遠い親戚でそうした人いたな」
久志は苦い顔になって述べた。
「残った家族の人達がいたたまれなかったな」
「残された人達はだな」
「ああ」
英雄は沈痛な声で答えた。
「俺もわからないではない」
「自殺した人とか」
「遺族の人達を見て来たからな」
それだけにというのだ。
「まだ事故で死んだ方がいい」
「それも無念だけれどな」
「若くしてだとな、だが」
「自殺よりはな」
「あんな嫌な死に方はない」
今度はこう言った。
「二度とだ」
「見たくないよな」
「そうだな」
「遺族の人達は苦い辛い顔をしていたな」
久志はそうして死んだ人の遺族の人達を見た葬式の場のことを思い出しつつそのうえで英雄に話した。
「沈みきっていてな」
「助けられなかったと思ってな」
「死なせてな」
「自殺するというからにはな」
英雄も苦いものを僅かであるが言葉に入れて話した。
「非常に辛く苦しんでだ」
「悩んでな」
「どうしようもなくなってだ」
「それでするものだからな」
「それ位ならな」
自殺をする位ならというのだ。
「誰かに話してだ」
「苦しみを吐き出してな」
「逃げてもいい」
「今いる場所からでもな」
「自殺の原因となる対象の前からな」
「それで心を休めるべきか」
「そうだ、そうしてだ」
そのうえでというのだ。
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