第四十六話 海を前にしてその六
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「巻き上げられてるだけだから」
「駄目ですか」
「ああしたところとかホストの人達はそれもお仕事だからね」
貢がせることもというのだ。
「自分の懐に入るから」
「だからですか」
「私はしないし彼氏や旦那にもね」
「させないですか」
「私も行かないしね」
自分もというのだ。
「ホストはね」
「浮気されないですし」
「それでね」
それと共にというのだ。
「そうしたことは駄目だけれど彼氏や旦那が風俗行く位は」
「いいですか」
「病気には気をつけて」
そのうえでというのだ。
「遊んでくれたらね」
「いいんですね」
「そうなの、私はね」
「ただ伊藤さんの奥さんは平気だったんですね」
留奈は考えつつ店長に問うた。
「ご主人がそこまで遊んでも」
「当時お妾さんも普通だったじゃない」
「ああ、そうでした」
留奈も言われて頷いた。
「あの頃は」
「立場のある人ならね」
「誰でもですね」
「そうした人いたわよ」
「政治家さんも実業家の人達も」
「伊藤さんとよく比べられる山縣さんもね」
山縣有朋である、生前から今に至るまでお世辞にも評判はいいとは言えないが功績が多いことも事実である。
「いたのよ」
「そうした人が」
「とはいっても女好きかっていうと」
山縣がというのだ。
「違ったみたいよ」
「そうだったんですか」
「奇麗な人を見ても」
それでもというのだ。
「美人だなって言って」
「それで終わりですか」
「そうだったらしいわ」
「色気がないですね」
理虹はその話を聞いてこう述べた。
「山縣さんは」
「実際そう言われていたわよ」
「そうだったんですか」
「けれどそうした人はいたの」
「それが当時は普通だったんですね」
「昭和位まではね」
この頃まではというのだ。
「立場がある人はね」
「お妾さんがいたんですね」
「それで奥さんもね」
「それは承知だったんですね」
「だから伊藤さんの奥さんも」
この人もというのだ。
「旦那さんがそんなのでも」
「怒らなかったんですか」
「笑ってたそうよ」
「凄いですね、それはまた」
「今だと離婚沙汰だけれど」
どの様な立場の者でもだ、そうでなくとも社会的生命が危うくなる。有力政治家もそれで失脚してしまう。
「当時はね」
「普通のことで」
「伊藤さんがどれだけ女好きでもね」
「無名の芸者さんばかりで」
「奥さんも笑っていたから」
それ故にというのだ。
「マスコミが好き勝手書いてね」
「終わりですか」
「もう無茶苦茶書かれていたけれど」
当時のマスコミにだ。
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