第二章
[8]前話
良太は監督にその医者を紹介してもらった、そして医者から癌特に神楽がなってしまった若年性の乳癌の話を聞いた。
するとだ、再発の危険は確かにあるが。
「怖れることはないですか」
「大事なのは健康を意識してストレスに気をつけて早期発見を心掛けることです」
医師は良太に織田かやな声で話した。
「そして相手の方も呼んで下さい」
「彼女にもお話してくれますか」
「例え若くして癌になっても」
それでもというのだ。
「それで終わりではないです、人生はそれからもです」
「若くして癌になっても」
「長いです、むしろ癌になったから幸せを避ける方がです」
その方がというのだ。
「駄目です、ですから相手の方にもです」
「お話してくれますか」
「はい、誰もが幸せになる権利がありますので」
こう言ってだった。
良太は神楽にも話を聞いてもらった、彼女もその話を聞いてだ。
考えをあらためた、そして良太と結婚し。
子供が出来孫も生まれて金婚式を迎えた時に彼に言った。
「若しあの時諦めて」
「葛根していなかったら今俺達はこうしてないよな」
「そうよね」
二人共すっかり年老いたその顔で話した。
「絶対に」
「癌になってもな」
「若い時にね」
「それで諦めたらな」
「よくないわね」
「若くして脳梗塞で倒れたのに頑張ってる人もいるんだ」
癌ではないがとだ、良太は妻に話した。
「何十年も、だったらな」
「癌も同じね」
「結局再発しなかったな」
「ええ、今までね」
「再発するとも限らないし」
「再発しない様に気を付けることも出来るわね」
「そうだ、だからな」
こうしたものだからだというのだ。
「諦めないでな」
「幸せになればよかったし」
「現に今俺達は幸せだな」
「とてもね、癌は怖いけれど」
このことは事実だがというのだ。
「それでもね」
「幸せになることを諦めたらな」
「本末転倒ね」
「そんなことをしたらな、じゃあな」
「ええ、今からね」
「皆のところに行こう」
家族や親戚、古い友人達そこには良太の上司だった監督や二人に話してくれた医師も高齢だがいた。そこにとだ。
良太は神楽に言った、すると神楽も微笑んで応えた。
「そうしましょう」
「ああ、今からな」
二人でこう話して式に出た、そして共に最高の幸せこれまでの五十年もそうだったがその中でも最高のその時を迎えたのだった。
癌になってもいい 完
2022・12・28
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