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女神の嫉妬 
第三章

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「アッティスといいます」
「今度ペッシヌスの王女と結婚します」
「あら、この子は」 
 見ればです。 
 きらきらとした青い目と茶色い鳥の巣の様な癖のある短い髪の毛にあどけない顔立ちにきめ細かな肌に華奢な感じの中背の身体の少年です、アグディスティスはその少年を見て言いました。
「私が想っている」
「えっ、そうなの!?」
「ええ、間違いないわ」
 娘に真顔で答えました。
「前からいいと言っていて」
「結婚するって聞いて怒っていた」
「その子よ」
「待って、お母様知らないうちになの」
「自分の孫に恋していたみたいね」
「それで不倫さえしたいって思っていたの」
「あくまで思うだけよ」
 アグディスティスはこのことを断りました。
「私は」
「それでもよね」
「まあそれはね」
「呆れた、自分の孫に恋焦がれていたの」
 ナナは実際にそうしたお顔になって言いました。
「それも不倫したいとまで」
「流石に自分の孫と不倫しないわよ」
「有り得ないわよ」 
 ナナは怒って反論しました。
「幾ら節操のない神様や人間ばかりでも」
「この世はね」
「自分の孫と不倫とか」
「子供でもないわね」
「そうよ、全く関係を持たないでよかったわ」
「私もそう思うわ」
「全く、今でもわかってよかったわ」 
 ナナはやれやれと思いつつこうも言いました。
「本当にね」
「いや、今恋愛感情が一気になくなったわ」
「それで今はどう思ってるの?」
「孫は可愛いわね」
 今度はにこにことして言う女神様でした。
「本当に」
「お婆さんになるの嫌じゃなかったの」
「気が変わったわ、じゃあお祝いの品を贈るわね」
「お願いね、しかし知らないとはいえ自分の孫に恋するなんて」
「世の中こうしたこともあるのね」
「神様でもね。ある意味いい勉強になったわ」 
 こうも言うのでした、そして母神からの贈りものを受けますが。
 アッティスが結婚してからです。アグディスティスは。
 彼にも他の孫にもひいては曾孫達にもどんどん贈りものをして神の祝福を与えて甘やかします、それでナナはまた言いました。
「甘やかし過ぎよ」
「いいじゃない、可愛いんだから」
「お婆さんになるの嫌って言ってたのに」
「今は違うのよ」
「ころころ変わるわね」
「いいじゃない、不倫はしてないし」
「甘やかすのも駄目よ」 
 それもまたと言うナナでした、そしてずっと孫や曾孫を甘やかすお母さんに注意する様になりました。ギリシアの古いお話です。


女神の嫉妬   完


                 2022・8・13
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