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黒尊仏
第三章

[8]前話
「御仏が教えられたのだ」
「そうなのですね」
「左様」
 仏も言ってきた。
「それを教えたまででな」
「それでですな」
「目を潰すつもりはなかった」
 最初からというのだ。
「見えるものは見えると言い」
「見えないなら見えぬ」
「知ってることはそう言いな」
「知らぬならですな」
「そう言うことこそな」
 まさにというのだ。
「正しきこと、それをしてこそじゃ」
「人ですな」
「これでこの者は前よりもよくなった」
 仏は義敦に半右衛門を見つつ話した。
「そなたも頼りにしていいぞ」
「これまでも頼りにしていましたが」
「そうしたところがであるな」
「どうしても気になっていました」
「そうであるな、しかしな」
「これからは」
「それもなくなる」
 この度のことでというのだ。
「心から反省したからな」
「それ故に」
「あの、何か」
 ここでだ、半右衛門は義敦に驚きを隠せない顔で言ってきた。
「それがしにも御仏が」
「見えるか」
「今は」
「これはまたどうして」
「そなたもそこまでの者になったということ」
 仏は半右衛門に笑顔で話した。
「この度の反省でな」
「そうなのですか」
「人は反省する度によくなるもの」
「過ちに気付いて」
「左様、だからな」
 それでというのだ。
「私が見える様になった、ではこの反省を忘れぬ様」
「はい、以後知ったかぶりをしたり見栄を張ることはしませぬ」
「その様にな
 仏はこう言うとその場を後にした、そして義敦は。
 ブナの実を食べてだ、半右衛門に笑顔で話した。
「美味いぞ」
「それは何よりですな」
「そなたも食せよ」
「では」
 半右衛門も頷いてだった。
 彼も周りの者達も実を食べた、彼は一口食べてから言った。
「確かに美味いです」
「ではこの美味さと共にな」
 義敦は彼の言葉を受けて述べた。
「今日のことは忘れずに」
「そうしてこれからも励んでいきましょう」
「この世のことにな」
「それがしこれまで以上に殿にお仕えします」
「宜しく頼むぞ」
 半右衛門の言葉に笑顔で応えた、そうしてだった。
 皆でブナの実を食べた、それは確かに美味かった。
 この話は今も秋田県に残っている。黒尊仏とブナの実に伝わる古い話である。何事も知ったかぶりは見栄はよくないということであろう。


黒尊仏   完


                   2022・7・14
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