第四章
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「それで何でだよ」
「黒人をどうとか言うとかか」
「そんな筈ないだろ、だから差別がなくなることはな」
黒人へのそれがというのだ。
「いいことだよ」
「そのことは素直に歓迎するな」
「野球でもそうなるんならな」
「軍隊でそうなってきてな」
「それはいいさ、けれどな」
ジョンソンに嬉しい様な残念な様な複雑な顔になって話した。
「それでだよ」
「黒人リーグが駄目になるとか」
「寂しいな」
「いいリーグか」
「本当にな」
こう言い切った。
「それが駄目になることはな」
「まあこれからは大リーグ観戦しろってことだな」
「いいプレイをする黒人選手見たいとか」
「そういうことだな」
「そうか、じゃあ俺もな」
マッケンローは自分のことを話した。
「そのうち黒人リーグの試合観なくなるか」
「いいプレイをする選手が皆大リーグに行ったらな」
「そうなるか」
考える顔で言った、そうして職場での仕事に戻ったが。
心配は当たった、黒人リーグの試合を観に行くとだった。
次第にいいプレイをする選手はいなくなっていっていた、そして観客達もだ。
「随分減ったな」
「あんた久し振りだな」
馴染みの中年の黒人男性が言ってきた、中年と言ってもやはり年齢を重ねてきていてそれが外見にも出ている。
「戦争に行ってたな」
「ああ、それで帰ってきたけどな」
「俺は爆撃機造る工場にいたよ」
そこで働いていたというのだ。
「腰が今一つでな」
「軍隊に入れなかったか」
「それでな」
「そうだったんだな」
「ああ、それで今減ったって言ったな」
彼はマッケンローに言ってきた。
「球場見回して」
「お客さんがな」
マッケンローは正直に答えた。
「そう思ったよ」
「そうだな、大リーグが黒人選手入れる様になってな」
「いい選手はあっちに行ってか」
「その選手のプレイ見たい奴はだよ」
「皆そっちに行ってるか」
「そうさ、それでこっちはな」
黒人リーグの方はというのだ。
「いい選手も減ってな」
「お客さんもだな」
「減ってるんだよ」
「そういうことだな」
「ああ、どんどん減ってくだろうな」
「寂しいな、しかし俺もな」
試合を観つつ話した。
「これはっていう選手が減ったからな」
「あんたもそうだな」
「大リーグの方に行くかもな」
こう言うのだった。
「観戦は」
「ラジオもか」
「そうするかもな」
こう言うのだった。
「もうな」
「そうなんだな」
「やっぱり面白い試合を観たいさ」
マッケンローは本音を出した。
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