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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十五話 陸軍軍監本部にて
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 愉悦の笑みを浮かべている。

「私も当分は部隊の面倒を見ることになりそうです」

「連隊長だったな?私の下に居た時にはただの大尉だったのだがな
ふふふ、来年には閣下にでもなるか?」

「またまたご冗談を。――あぁ、そう言えばお聞きして宜しいでしょうか?」
閣下、で思い出した。
「何だ?」
今まで見たことが無いほど上機嫌である。
正直、逆に恐い。

「個人副官をつけていらっしゃらないのですか?
いえ、ちょっとした好奇心ですが」

 豊久が個人的に知っている将官は誰もつけていないが、将官には両性具有者である個人副官の配属を希望する権利がある。
彼(女)達は法的には亜人として扱われており、女性的な美貌と高い知性の持ち主であるが、 一度愛情を持った相手への依存心が高く、それは時に狂信の域にまで達するのが種族的な特徴である。
そして忠実であり、コトに及んでも産まれるのは彼女(かれ)らの同族達―だ。
――つまりは人間を妊娠しない(相続の面倒が起きない)、と色々な意味で都合が良いらしい。
結構な数の将官が彼女(かれ)達の配属を希望している。
「――家のが、な」
 先程の上機嫌から一転して僅かながら恐怖の表情が張り付いている。
「あぁ、分かりました。だいたい私の知ってる方達と同じですわな」
 一般的に、個人副官は周囲からは情人扱いされる。例外とされる者もそう勘ぐられる。
それからは如何に軍監本部の要人と言えど逃げられない様だ。
 ――それにしても恐妻家だったのか、この人。
何故か先ほどの朱に交わればの言葉が脳裏に浮かび、慌てて豊久はそれを打ち消した。

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