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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十五話 陸軍軍監本部にて
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「別に君が考えているほど、難しい事情じゃない。
各鎮台は戦時体制――軍への改編を行っている最中だからな。ある程度は融通を利かせられる。それに、君にもある程度自由にやらせてあげないと信賞必罰が問われる。
家の末弟も相当好き勝手に動くつもりらしいからな。」
そう言って保胤は苦笑する。
 ――信賞必罰が問われる、か。本当にそれだけだろうか――いや、あまり勘繰るのも失礼だろう。
「とりあえずは編制だけでも決めたまえ。そうすればすぐに準備にかかれる」
――定数か。現在決定しているのは銃兵二個大隊と鉄虎兵大隊の三個大隊
鉄虎は単独行動が多くなるから七百近くと計算して――二千名と試算しよう。
支援部隊の割合を考えると余り空きが無いな。
 ――騎兵は捜索専用の一個中隊だな。剣牙虎に慣らしても馬は万全な状態にはならない。相手の騎兵を脅かす為に吼える時に此方まで馬が動揺し、落馬する者すら出る可能性すらある。駒城の騎兵は精兵だ。あまり枠をとるよりも本隊で活躍してもらおう。
 ――後は砲だ。最近、周囲に忘れられている気がするが俺の本職である。
最低でも平射砲二個中隊と擲射砲一個の大隊だな。それに第一・第二大隊にも臼砲・騎兵砲を各一個小隊分配置させよう。輜重部隊に負担がかかるが仕方ない。
 ――後は導術兵と野戦築城が出来る工兵中隊、この二部隊は使いどころが肝心だ。苗川で実証されたとおり、陣地にこもって防衛戦は導術と相性が良い。場所を選べばこの連隊でも向こうの旅団を数日程度は食い止められるだろう。導術も疲れきらない様に注意しなくてはならない。そして一番苦労するであろう輜重大隊と療兵・給食中隊か――
 ぶつぶつと呟きながら手持ちの帳面で試算する。
「閣下、頭数は三千を超えます。宜しいでしょうか?」
 そう云って書き付けた覚書を渡す。
「構わない、流石に4千を超えたら困ったがね。
ならば定員は――三千九百名で良いかな?」
興味深そうに豊久の帳面に目を通して言う。
「――しかし、これだとほとんど旅団規模だな。君も存外に遠慮がない」
「前線や後衛戦闘に送られる可能性が高いですからね。限界まで弄繰り回さなくては冥府で愚痴をこぼすくらいしかできません」
豊久の言い草に保胤は声をたてて笑う。
「なるほど、君も直衛と付き合いが長いわけだ」
「――朱に交われば何とやら、と言いますからね。」
 豊久は苦いものが混じった笑みで答え、ついでにと遠慮なく注文を再度飛ばす。
「――あぁそれと戦務課の大辺少佐を本部付で回してもらえませんでしょうか?」

「首席幕僚に配属させるのか?たしか豊守の子飼だったか?
わかった、窪岡少将には私から話しておこう」

「あと古参の剣虎兵将校を本部付で一人お願いいたします。
それと砲兵将校を数名程、富成中佐に推薦をお願い
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