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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十五話 陸軍軍監本部にて
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主家の面目が立たないのさ。
既存部隊である独立銃兵第三六五大隊と再編し第一大隊、馬堂家から鋭兵一個大隊を出して第二大隊とし、これを基幹部隊とする。
それと新設途中の鉄虎大隊、この三個大隊を基幹に部隊を集成する予定だ」
保胤が抱えていた書類から数枚を手に取りながら説明をする。
 ――連隊に鉄虎大隊?
ひくり、と豊久の眉が動いた。 
「閣下、剣虎兵は全て独立部隊として編成するのではありませんか?」
 これは単純に威力偵察に迂回・奇襲と単独行動を前提とした運用が多い為である。
それに剣牙虎に慣れた馬は少ない事もあり、剣虎兵は一般部隊にとって厄介者なのだ。
第十一大隊でも輜重部隊の駄馬や砲兵の輓馬が剣牙虎に怯える等と本部で散々頭を痛めた前例がある。剣虎兵が主体の独立大隊でもそうだったのだから与えられた聯隊では他の兵科が増える分問題が増える事は火を見るより明らかだ
「導術を利用した連携の実験だ。君が一番理解していると思うが、剣虎兵の損耗率が高い。
勿論、それ以上に戦果も高いのだが、何しろ四年前に漸く部隊が編成されたばかりの新兵科だ。現在の運用法だけでは消耗に育成が追いつかなくなるかもしれない。
何しろ後備部隊も存在しないからな。故に他の部隊と緊密な連携を行いそれによって損害をどの程度減らせるかの実験の意味もある。――故に中佐に任せる部隊は極めて実験的な要素も含まれている」
 ――――剣虎兵は使い方さえ誤らなければ強力ではあるのだ、それは疑問の余地は無い。
だが馬と相性の悪い剣虎兵は他兵科との連携が困難であり、諸兵科連合での運用面からみると使い勝手が悪く、補助が難しい。その為、得意の多勢相手の奇襲も敵軍が統制を取り戻したら。各個撃破の的でしかない、第十一大隊が良い例である
 ――だからこその実験部隊か、ならば専科の幕僚と連携の肝となる導術が欲しいな。
「閣下、導術部隊の規模は如何程になりますか?」

「百三十名前後だ。戦闘導術中隊を本部付でつけられる。だがこの部隊は補充が難しいから慎重につかってくれ」
 ――異様に充実している。導術兵の動員が進んでいるのだろうか?それともこの部隊の実験に余程期待をしているのか?だとしたら連隊である以上、定数は2000前後が常識だが――何時でも戦力不足になるのが戦場である。単独運用もされるだろうし、旅団すれすれにしたって良いだろう。 だが規模が大きくなると面倒も増えてしまうな、だとしたら問題は――

「連隊が編成されるのは何時ぐらいからになりますか?」
大粒の宝石を鑑定する質屋のような顔で尋ねる家臣を眺めながら保胤は面白そうに答える。
「基幹部隊はすぐに聯隊として編成準備に入れる。新編部隊は、一ヶ月以内に―――君が軍務に復帰したら直ぐに連隊全隊の面倒を見られる様にする。」
「早いですね」

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