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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十五話 陸軍軍監本部にて
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る。
「私もそう思う、傷口を最小限に抑えられた事は大きいだろう。直衛も珍しく素直に褒めていたよ。あいつも難儀な性質だからな、君が居てくれて助かった。――それに過程がどうであれ殿下に対しても上手く渡りをつけてくれたからな」
「――はい、閣下。部隊に恵まれました。特に御育預殿には助けていただきました。彼がいなかったら私はここに居なかったでしょう」
豊久の言に保胤は目を細めて頷いた。
「だが彼奴を上手く扱えるのは、それこそ今の時点では君くらいだろう。
大隊に送るときは不安だった。あれに幕僚が務まるとは思えなかったからな。
――だが剣虎兵はまだ人務に干渉できるほど余裕のあるところではなかったからな」

「ですが、取り敢えず良い意味で注目が集まりました。泥縄ですが人材は集まりやすくなるでしょう。
――育預殿が近衛衆兵にて念願の剣虎兵大隊を預かるとしたら面白いですね。剣虎兵の運用について私は素人です。彼がどう扱うのか興味があります、それに彼がどう扱われるのかも」
そう言うと若い陪臣は薄く笑みを浮かべて主家の若中将と視線を結ぶ。
「あぁ――君も知っている通り、駒州の中でも色々口を出す輩が多い。
それならば、と実仁殿下が衆兵隊で自由にやらせたいと言っていた。
衆兵隊司令としても直衛を頼りにしていらっしゃるようだ。なにしろ北領帰りの剣虎兵だ。
その価値は君もわかっているだろう?」
 一瞬口篭ったが淀みない口調で家臣の視線に答える姿を豊久は分析する。
 ――若殿なら自分の目が届く駒州の後備に送るものだと考えていたが親王殿下から言い出したのか。義兄としては思う所がある、と見てよいだろう。
 ――できればもう少し探りたいな、さすがに皇族相手になると陪臣は口をはさめない。
「それに殿下は君のことも気にかけておられる。
君のおかげで下手な綱渡りをしないですんだとね」
「殿下は衆民を救出し、後衛戦闘の危険を必要以上に侵さず、皇族として期待された以上の武勲をお上げになりました。私は殿下から大きな助力を得られました。
私としては、殿下のお力添えで自分の命が?がっているので十分以上に採算がとれたと思っています」
 どことなく義弟を思わせる物言いに保胤は苦笑を浮かべる。
「馬堂の者らしい言い草だ。君はたしかもうじき二十七だったかな?
その若さで皇族をつかって状況を動かしたのだ、注目もされるだろうさ」
 ――尤もあの方にとっては衆民の英雄――新城のついでだろう。どうせ、糞生意気な将家の小僧程度にしか思っていないだろう。
「光栄です、閣下」
 どうしたものか、と豊久は脳裏で算盤を弾きながら主の言葉に恭しく頭を下げる。
 ――自分は近衛への伝手を十分に持っている。益満大佐に連絡すれば禁士隊の実情は十分把握出来るし、衆兵は新城が大隊の編成の際に当て
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