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恋姫〜如水伝〜
序章

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日本国慶長9年・京伏見 そこで一人の男が息を引き取ろうとしていた。
その男の名は黒田孝高、呼名を官兵衛と言い、隠居した今では如水と呼ばれかつてこの国の戦国の世で亡き太閤秀吉を助け、その天下を作ったとまで巷間では噂に語られる戦国英雄列伝に名を連ねる一人の老人である。 
「私もここで死ぬか。乱世を終わらせた自分の役目もここまでだと思えば、良い人生だったかも知れんな」
と呟きながら自分の半生を振り返ってみた。
「非業に死んだ故右大臣、落魄して没した藤兵衛殿、御拾いの事を案じながら世を去った秀吉に。この戦乱で無念に散っていった者たちに比べればなんと幸せな事だろうか」
そして今は無き二人の友を思い出し
「隆景殿に重治殿の二人に比べれば、愚息は大封を持ち、徳川の覚えも悪くない、悔いの無い人生だろうな」
と面白みを込めて満足していた。しかしと自分でも思う事がある自分に別の生き方があればどうしたのだろうかと、自分の人生は二人の人間を助けてきた。最初は小寺政職で次は羽柴秀吉。関ヶ原の時は運に任せて自分が天下を取ろうとしたが天運が自分に無く自分に出来るのは誰かを支える事だと知った。それでも自分が思うのは別の人生を歩く自分の姿だった。
そして末期の息を引き取る今際に誰かの声が聞こえた気がした。

もう一度機会が欲しいかと

おぼろげな意識の中で自分はそれを望んだ。
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