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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第六十二話 混乱の始まり
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の機会はもっと早くてもよかった筈です」
「確かにそうだ。宮中の事はよく分からないが、干されるという事は貴族としては死んだに等しい。侯爵という爵位なら尚更だろう。たとえ皇太子時代に敵対していたとしても、前非を悔いて恭順の姿勢を見せれば宮中への出入りを止められるという事はあるまい。それをしなかったという事は恭順する気は全くなかった、という事だ」
「はい。そしてクロプシュトック侯は後継者を戦死という形で全て失っています。高齢…老いた方が息子を全て失う。老いた方の心中は分かりませんが、生きる希望を見いだせなくなる事は容易に推察出来ます。そしてそれはその事態を招いた現体制への憎悪に繋がりかねない」
「…全てを呪い、事態を招いた者への復讐へと走る…」
俺達の考えは間違っているだろうか…俺とて姉上を害されたら復讐に走るだろう。ましてやクロプシュトック侯は既に愛すべき息子達を失っているのだ。侯の半生を考えてみれば、皇帝本人がその事態を引き起こした、と思考を直結させてもおかしくはない…急がねば!

 来賓客間に戻ると、残っていたのはブラウンシュヴァイク公とヒルデスハイム伯の二人だけだった。家臣の方々は、と訪ねると伯が笑って答えた。
「献上品の受け入れ準備に向かったよ。クロプシュトック侯はやはり再出仕のとりなしを求めておいでらしい。陛下への献上品があるとかで、結構な量がある様だった。陛下への献上品ともなれば御披露目せねばならんからな、その支度という訳だ」
「侯ご本人はどちらへ?」
「やはり陛下へ直々にお目にかかるのは気後れする様でな、陛下と遠征軍の勝利を願う挨拶をされた後は早々に退散なされたそうだ。十五分程前だろうか…それにしても長いトイレだったな」
トイレとはかけ離れた俺達の真剣な表情に不審を感じたのだろう、伯の顔から笑いが消える。俺は自分の考えを伯に説明した。
「それは…あり得ない事ではないな。そうか、となると献上品とは…閣下」
ブラウンシュヴァイク公が立ち上がる。腹臣達に説明する為だろう、急いで来賓客間を出て行った。
「献上品とやらが搬入されるのはまもなくですか?」
「だろうとは思うが」
「我々も急ぎましょう。公に協力して来客を避難させねばなりません」




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