第六十二話 混乱の始まり
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この手紙が来た意味を考えねばならん。そして誰が送って来たか、だ」
この家に手紙が来た意味、だと?
「…まあよい。シュトライト、宮内省、侍従長に連絡して陛下の行幸は取り止めにした方が良いと伝えろ。理由を聞かれたらこの手紙を見せても構わん。まだ間に合う筈だ、急げ」
そうだった…もうすぐ姉上と皇帝がここに来るのだ。何かを企むとしたら園遊会は格好の舞台だ…だが待て、侯爵夫人が何かを企むとして皇帝に類の及ぶ様な場所を選ぶだろうか?侯爵夫人の目的は、皇帝の寵を取り戻す事にある筈だ…そしてそれを取り戻すには姉上の存在が邪魔だと考えている…そう考えねば侯爵夫人の害意は成り立たない。となるとその害意は皇帝本人には向けられないだろう。であれば侯爵夫人が何か企むとしても決行は今日ではない筈だ。だが万が一という事もある、ブラウンシュヴァイク公の行動は褒められるべきだろう…そこまで考えた時、公の使用人が来客を伝えて来た。
「…クロプシュトック侯だと?招待などしていないのだがな」
そう呟いた公の顔は疑念と不審に溢れていた。俺やキルヒアイスの顔も同様だったのだろう、ヒルデスハイム伯が疑問に答えてくれた。
「宮中に疎い卿等の事だ、名前も知らんのだろう」
「恥ずかしながら…侯爵閣下という事は著名な方なのでしょうが…」
「まあ知らんのも無理はない。クロプシュトック侯はここ三十年程宮中から遠ざかっていたからな」
「三十年、ですか」
「うむ。侯は当時の皇太子フリードリヒ四世殿下の政敵、といっても過言ではない存在だった。私も父や公から聞いただけであまり詳しくは知らないが。殿下を貶める事甚だしい動きをしていたらしい」
「…なるほど。フリードリヒ四世殿下が即位された結果、遠ざけられた…干されたという訳ですか」
「そういう事だ」
「ですが、三十年も宮中を遠ざけられた方が何故今になって出てこられたのでしょう?」
「先日のイゼルローンの戦いで次男を失ったそうだ。長男も既に戦死しているから、侯としては後継者問題やら色々と問題が山積みだろう。侯自身もかなりの高齢だしブラウンシュヴァイク公にとりなしを頼みに来た…そんな所ではないかな。皇帝陛下も臨席予定であらせられたのだからな…それより卿ももう少し宮中の事を勉強した方がいいな」
「…申し訳ありません」
とりあえず申し訳無いとは答えたものの、何かひっかかる。キルヒアイスも同様なのだろう、眉間に皺を寄せたままだ。
「ラインハルト様、お手洗いを借りませんか」
「…ああ。申し訳ありません、お手洗いをお借りしても宜しいでしょうか」
構わんぞ、との公の許可を得てトイレに向かう。屋敷が広すぎる、急な便意が起きたらどうするつもりだろう…。
「クロプシュトック侯は何故今になって公爵閣下にとりなしを頼むのでしょう?三十年も遠ざけられたとはいえ、そ
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