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イベリス
第七十八話 夏バテも考えてその七

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「他の者も食べたらいいのよ、お素麺は炭水化物でしょ」
「麺類だしね」
 咲もそれならと答えた。
「そうよね」
「炭水化物だけだとね」
「栄養偏るのも当然ね」
「白いご飯だけでも駄目でしょ」
「脚気になるわね」
「江戸時代からそれで随分問題になったし」
 母は素麺を食べ終えてそこにある野菜を食べはじめた、そちらも残さず食べる様にしていることがそれでわかった。
 それで咲も素麺の後の野菜も食べて話した。
「脚気って怖いからね」
「死ぬわよ」
 母は真顔で答えた。
「本当にね」
「心臓が止まって」
「足がむくんで動けなくなってね」
「それで沢山の人tが死んだのよね」
「東京でもね」
「江戸腫れって言われて」
「都会じゃ皆白いご飯食べて」
 そうしてとだ、母は話した。
「そればかりね」
「それがよくなくて」
「脚気になってよ」
「沢山の人が死んだのよね」
「明治までそうだったのよ」
「軍隊でもね」
 咲はまた自分から言った。
「特に陸軍で」
「よく知ってるわね」
「森鴎外がね」 
 この文豪の名前を実に嫌そうに話した。
「軍医の偉い人で」
「後で軍医総監になったのよね」
「お母さんも知ってるの」
「あの人の本の最後の経歴に書いてあるわよ」
 その人生のだ。
「芥川や太宰だって詳細に書いてあるでしょ」
「それであの人もね」
「あそこに書いてあったからね」
「お母さんも知ってるのね」
「雁読んだら」
 この作家の代表作の一つである。
「あったからね」
「そこでお母さんも知ったの」
「エリート中のエリートだったのよ」
「お医者さんとして」
「けれどね」
 経歴は立派だったがというのだ。
「エリートっていうだけで」
「物凄い頑固で」
「権威主義だったから」
「脚気のことをあくまで認めないで」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「結果としてね」
「日露戦争で沢山の人が脚気で死んだのよね」
「日清戦争もそうでね」
「そのこと私も知ってるから」
 それでというのだ。
「今もね」
「わかるのね」
「ええ、そのことと同じね」
「そうよ、お素麺だけだとね」
「当然身体に悪いわね」
「だからお野菜も食べて」
「冷奴もよね」
 こちらもというのだ。
「食べてね、それで飲みものも」
「牛乳飲むといいのね」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「森鴎外を忘れないでね」
「あの人作家としては兎も角」
「軍医としては、ね」
「最低だったのよね。他にもやってきたこと調べたら」
 私人即ち森林太郎としてはだ。
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