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第一話 開幕その十一

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「そしてその時にあらためて」
「こうしてお話をする」
「そうしよう」
 最後まで優しい声で告げてだった。
 牙暁は彼の心の中からも去った、全ては夢の中のことだった。
 白いコートと赤系統のスーツにネクタイを着た金髪を真ん中で分けた長身の青年だった、優し気な顔は微笑んでいる。
 その青年の夢に出てだ、牙暁は話した。
「もう話しましたが」
「僕が地の龍の一人ということでしたね」
 青年は笑って応えた。
「教えて頂き有り難うございます」
「辛いことになるけれど」
「いえ、そうは思っていませんよ」
 青年は俯いた牙暁に優しく笑って言葉を返した。
「それも運命です」
「そう言ってくれますか」
「運命に身を任せるのもです」
「いいですか」
「それも一興です」
「麒飼遊人さん、貴方はいつも結ばれるお二人を祝福されますね」
 牙暁は青年の名前を出して問うた。
「そうですね」
「婚姻届ですか?」
「そして別れる時は残念そうに」
「それが本心からのものだと」
「違いますか」
「本心ですよ」
 遊人はここでも笑った、そのうえで答えた。
「どちらも」
「人が幸せになると喜び別れを悲しむ」
「そうなっています」
「それが本心ですね」
「ええ、やっぱり幸せになって欲しいです」
 遊人はこうも言った。
「どなたも」
「しかし地の龍は」
「ですから運命の流れに身を任せることもです」
「いいですか」
「一興です」
 そうだというのだ。
「そう考えていますので、僕は」
「これよりですね」
「地の龍として動きます」
 その一人としてというのだ。
「明日でしたね」
「庚さんに会います」
「ではそれから」
「その様にですか」
「動きます」
 牙暁に微笑んで答えた。
「その時から」
「では。ただ貴方は人間を殺すことは」
「趣味ではありません、いじめや暴力を受けた経験もです」
 遊人はやや真面目な顔になって答えた。
「ありません」
「そうですね」
「そうしたこととは無縁です。戦いの経験はありますが」
「それでもですか」
「無益な殺生はしません」
「それでもですね」
「運命に身を任せますよ」
 こう言うのだった。
「それも面白いでしょうし」
「だからですか」
「そうします、では仲間として」
「これからですね」
「宜しくお願いしますね」
 水面の上で向かい合って話した、そうして去る牙暁を笑顔で送ったのだった。
 牙暁は眼鏡をかけたクールな少女の夢にも出た、黒いショートヘアでシャツと半ズボンに覆われている身体はすらりとしている。
 その彼女にだ、牙暁は話した。
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